2011 Fiscal Year Annual Research Report
パスカルの時代における蓋然性と確実性に関する多角的研究
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22520316
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永瀬 春男 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (60135100)
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Keywords | 仏文学 / パスカル / パンセ / 蓋然性 |
Research Abstract |
昨年度に続き、蓋然性と確実性にかかわる文献調査に努め、同じ問題意識からパスカルの著述群、計算機製作過程、デカルト『省察録』などの読み直しを行なった。その具体的成果としては、論文「パスカルにおける始原と中間(その2)」を発表した。この論文では、第1に、パスカルの政治論を扱い、小品『大貴族の身分に関する講話』および『パンセ』の政治論を、「始原」と「中間」という新しい観点から再評価し、身分制や王制、法体系といった政治秩序が、その起源においては不確実と無根拠性を露呈し、正当性を揺るがされること、しかしそうした起源を隠蔽した状態でなら、邪欲からさえ引き出された「みごとな秩序」として讃えられ、相対的安定を獲得することを指摘した。こうした相反する二面性は、先立つ論考(その1)で見た人間的認識や「幾何学の秩序」の場合と、コンテクストの違いを超えた類比性を見せるものである。第2に、護教論の構成自体にも、同じ構図が当てはまることを明らかにした。パスカルの護教論は、無神論者折伏のために、全27章が有機的な連関をもって展開するという独自の「秩序」を示す作品であるが、認識論や政治論の場合同様、著作の「初め」と「終わり」において、いわばその無力を宣告され、著者自身、そうした護教的努力の結果獲得される信仰が、「救いには無益」であると告白する。最終的に人間の心を真の信仰へと傾かせるのは神の業であり、人間的努力ではいかんともしがたい事柄だからである。こうして、幾何学も政治も護教論も、「愛の秩序」の確実性を欠いているが、にもかかわらずその「似姿」として、中間的・蓋然的秩序、人間に唯一可能な秩序であり、同時に肯定と否定の対象となる。本年度はこうした諸点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「確実性」と「蓋然性」という課題の大きな枠組みのなかで、パスカルの政治論および護教論・護教観を中心に、検討を一歩先へ進めえた。一方で、同時代の思想的文脈にまで探究の触手を十分に及ぼしえなかった点で、達成度を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題3年目以降は、2年目に果たせなかったフランス国立図書館での資料探索を再度行い、パスカルの時代の思想的背景の理解を深めたい。また、近年刊行が相継いだ、17世紀における「思慮」概念に関する研究文献に学びつつ、課題把握の深化に努めたい。
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Research Products
(1 results)