2011 Fiscal Year Annual Research Report
論客としてのラシーヌ考察――作品の位置づけと影響関係に関する諸問題
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22520317
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
柳 光子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60284387)
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Keywords | ラシーヌ / 文学論争 / 17世紀フランス文学 |
Research Abstract |
古典主義時代の文学論争の実態を多面的に把握するための調査を補うことを目的に、9月に約10日間、主にパリのフランス国立図書館で資料調査を実施した。複製の枚数制限が厳しいため短期間での調査には困難な面もあったが、マイクロフィルム化されている17世紀の文献を通読することができたほか、写真撮影が許された文献もあり、貴重な参考資料となった。時間切れとなった部分については、何らかの形で引き続きの調査を実施する予定である。 新たに参照した文献から、前年度の研究により注目していたアントワーヌ・ド・クールタンおよびその著作『フランスの貴紳が実践する礼儀についての新論』に関しての情報が得られ、また新たに発見した同時代の類書をマイクロフィルムにより読むことができたが、「効果的に語ること」が「効果的に書くこと」よりも優位とされてきた古典主義時代の価値観を論じ、ラシーヌおよび周辺作家にとっての「書くこと」の意義や認識を問う段階には至らなかった。これについては、さらに分析を重ね、次年度に論文としてまとめることができるよう努めたい。 このほか、古典主義時代の文人たちによる相互の批評について、幾つかの新しい文献を発見することができた。文学論争という事象を通じての作家たちの影響関係を論じる上で有用と思われるが、十分な論拠となりうるものかどうか、なお慎重な検討を要することも予想される。 論客としてのラシーヌ本人について、文学論争の渦中にあったとは考えられていない時期も視野に入れての長期的な主義主張の変遷を追う作業は最終年度の課題として残ったが、「書くこと」の意義をいかに捉えたか
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料の取り寄せを含む文献調査に多くの時間を費やし、予定していた研究成果の一部とりまとめにまでは至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
追加調査もできる限り継続するが、これまでの文献調査の結果をとりまとめることに重点をおいて研究課題の遂行に努める。研究計画の大幅な変更は予定しておらず、構想の「部を微修正(重点的に論考する文人の変更など)する程度で対応可能と推測される。
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