2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520324
|
Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
三瓶 尚実 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授
|
Keywords | ドイツ文学 / 翻訳論 / 言語論 / ハーマン |
Research Abstract |
18世紀ドイツ語圏における言語論の諸相を、翻訳論を中心として考察することが本年度の研究計画であった。特にハーマンにおける翻訳概念に関し、以下の2つの視点から調査研究を実施した。1)ドイツ語圏のみならずヨーロッパにおける翻訳史の文脈におけるハーマンの位置づけ。2)ハーマンの著作活動における翻訳活動と翻訳概念との関係とその変遷。1)については、5月に開催された日本ゲーテ協会のシンポジウムにパネリストの一人として参加し、ヘルダーやシュライアーマッハーの翻訳論の背景としての翻訳概念を主にハーマンの著作『美学提要』から読み解いた。初版本と全集版との比較検討を通して、従来の研究では見落とされていた、この著作のタイトルと翻訳概念および解釈概念との関連性を指摘した。このシンポジウムでの発表内容やそこで見えた課題を踏まえ、夏には18世紀関連の蔵書の豊富さで名高いヴォルフェンビュッテル図書館での文献調査を実施した。その成果は、9月にドイツ・ハレ大学で開催された国際ハーマン学会で発表された。ヨーロッパにおけるハーマン研究では翻訳概念にあまり関心が向けられないが、それゆえにハーマンの著作のみならず、ハーマン自身の翻訳活動との関わりから翻訳概念がはらむ可能性を読み解く試みには意義があったと考えられる。この発表に関するフロアからのコメントと議論によって、ヘルダーの翻訳論との関連で新たな知見を得ることができた。今後の研究につながる重要な成果である。
|
Research Products
(4 results)