2012 Fiscal Year Annual Research Report
初期ルネサンス期のスペイン語散文における修辞学技法の受容と定着
Project/Area Number |
22520325
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
瀧本 佳容子 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (70306869)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
|
Keywords | スペイン文学 / 初期ルネサンス / カスティーリャ |
Research Abstract |
初期ルネサンス期のカスティーリャ語文芸、特に散文に関し、以下の点を研究した。 1.前世紀末の王朝交代の余波、および、君主と貴族の権力闘争を背景に、俗語使用者たちが自らの存在証明を確立するために新しい理想と価値観を追求し、かつてなかった語彙や表現を用いて俗語であらわすに至った。 2.書籍の所有や読み書きの習慣化が、俗語使用者の間にも普及し始め、ラテン語能力のある学者および聖職者が占有していた学問や文芸も、より広い層の人びとに開かれるようになった。これは同時に、聖職者VS俗人、貴族VS平民という、身分・職業をめぐる闘争でもあった。 3.A. デ・カルタヘーナをはじめとするスコラ学者や聖職者からは、ラテン語学芸の世界への俗人の参入を阻もうとする圧力がかかった。 4.上のような趨勢下、サンティリャーナ侯や A. デ・ネブリハなどが、カスティーリャ語文芸を権威づけ歴史化しようと試みた。しかし、彼らは韻律を崇高視するラテン文学の伝統を継承しておりE. デ・ビリェーナのように、俗語散文の書き手たちに対するあからさまな侮蔑を表明した詩人もいた。俗語散文の書き手たちは、修辞学技法のうち、ars dictaminis(書簡術)および ars notaria(公文書術)の素養から出発し、自由な内容の人文主義的親愛書簡などを俗語で展開するに至った。これら俗語の書き手は、15世紀半ばから、ラテン語使用者や韻律崇拝論者たちへの反論を開始し、F. デ・ラ・トーレたちが、諧謔を交えた文章で自らの文体への自負を示した。15世紀後半には、特に、F. デ・プルガールが、複雑で繊細な心理をも表現するに至った。 以上のように、15世紀において、カスティーリャ語文芸の担い手たちは、大いなる自負と著者たる自覚を表明し始めた。15世紀は、16世紀に本格的展開を開始する、カスティーリャ語文芸のルネサンスを準備したのであった。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|