2012 Fiscal Year Annual Research Report
シュトゥルム・ウント・ドラングとヨーロッパ文化史――越境する文学の影響圏
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22520328
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今村 武 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (60385531)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シュトゥルム・ウント・ドラング / 文学史 / 絵画史 / 美術史 / 音楽史 / 辺境 / 様式概念 / 植民地 |
Research Abstract |
18世紀ドイツにおける文学シュトゥルム・ウント・ドラングを、その多様性に着目してヨーロッパ文化史との関連性から多角的に分析する本研究の当該年度における成果は以下の通り。 (1)イギリス文学(とりわけウィリアム・ブレイク)およびヨーロッパ絵画史・美術史と、シュトゥルム・ウント・ドラングの関連性について、ヨハン・ハインリヒ・フュスリ(ヘンリー・フューゼリ)を例に検証し、その成果の一部を論考として発表。 (2)スイスにおけるシュトゥルム・ウント・ドラング、それはシュトゥルム・ウント・ドラング文学自体の源流の一つと言えるものである。スイスのチューリヒにおける疾風怒濤の萌芽を社会史的側面から説明するための資料収集と分析を昨年度より引き続き推進した。 (3)ドイツ音楽史のなかでもとりわけ大バッハの息子カール・フィリップ・エマヌエル・バッハとコペンハーゲン在住の詩人ハインリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ゲルステンベルクの美学に関する往復書簡に着目し、資料の収集と分析をおこなった。また、その過程で、音楽研究者の知遇を得ることができた。 (4)上記の18世紀中葉から始まる、いわゆるドイツの啓蒙サークルにおける音楽と文学、そして美学にかんする議論、論争の過程でシュトゥルム・ウント・ドラングに通じる美学観が形成された経緯に着目し、これまでのドイツ文学研究では手薄であった北ドイツにおける多様な啓蒙の発現について、その重要性を研究会その他の機会に指摘した。この領域についての資料収集はすでに研究当初より進めていたが、その分析を一層進捗させることに意を用いた。 (5)研究成果の進捗状況は、少数の研究者からなる研究会を組織して、定期的に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は年度毎に基本テーマを設定して遂行することになっている。以下に各研究テーマとその進捗状況を記し、当初の計画以上に進展している状況を説明する。 平成22年度:ドイツ文学史における時代概念シュトゥルム・ウント・ドラングの成立過程の総括および、音楽史におけるシュトゥルム・ウント・ドラング文学・美学との関連性。ドイツ文学史上におけるシュトゥルム・ウント・ドラングの成立過程にかんしては、平成24年度に研究書『』を出版し一定の成果を挙げている。音楽史におけるシュトゥルム・ウント・ドラングについては、逐次資料収集と分析を進め、平成25年度にはその成果を上梓出来る予定である。 平成23年度:プロイセンの辺境地域における啓蒙とシュトゥルム・ウント・ドラングの萌芽。このテーマについてもすでに研究書に収録、および学会発表を行う等、当初の成果を達成していると評価出来る。とりわけこのテーマについては、学際性が強く、様々な機会に大小の発表を行う機会を得たことにより、研究の一層の進捗に寄与したと思われる。 平成24年度:バルト海沿岸地域におけるシュトゥルム・ウント・ドラングの実践的社会批判。このテーマについてもいち早くその成果を研究書に収録してある。特にカント哲学のその後の影響関係については、別個の研究体制を敷く必要がある。 平成25年度以降の研究テーマに関しても、資料収集と分析を弾力的に行った結果、論考の執筆に入っているものが約5編あり、成果を先取りして公表する状況となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの研究遂行状況に鑑みると、本研究の今後の推進方策は以下の要領で遂行すべきであろう。今後の研究の推進におけるリスクおよびタスクについては、各項目の初めに記載しておく。 (1)「研究成果の精査」「研究成果の第三者による評価」「新たな研究課題の登場」当初の計画以上に進展していると評価出来る研究状況ではあるけれども、これまでの研究成果を精査し、さらに研究書の上梓によって伝えられた書評その他の評価を分析する必要がある。とりわけ、研究の途中で浮上してきた幾つかの個別テーマについては、研究計画全体との兼ね合いをみながら対応する必要がある。これについては以下の(3)に記している今後の展開とも関連している。 (2)「成果発表の媒体」「研究成果の国際的な発信」本研究計画に記されている平成25年度以降のテーマである「アルザス・ロレーヌにおけるシュトゥルム・ウント・ドラング」「ドイツにおけるシュトゥルム・ウント・ドラングの成立と進展」について、特に研究会、学会での発表をバネとして、逐次研究成果を公表するスタイルを継続遂行する。また、研究成果は第一にドイツ語の論文で発表しているけれども、これについてもその発表数を増やす方向で検討する。 (3)「新たな課題の検討」これまでの研究から指摘することが出来た新たな課題を集約し、今後の展開、発展的な研究課題についても検討する必要がある。
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Research Products
(5 results)