2013 Fiscal Year Annual Research Report
十八世紀ドイツ文芸における社交性と非ヨーロッパ世界
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22520331
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
笠原 賢介 法政大学, 文学部, 教授 (10152620)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドイツ啓蒙と非ヨーロッパ世界 / レッシング / ヘルダー / 多文化的思考 / 社交性(ソシアビリティー) / 思想史 / 独文学 / 比較文学・比較文化 |
Research Abstract |
前年度までのテクスト分析、文献・資料収集の成果を踏まえ、18世紀ドイツ文芸・思想における社交性のモチーフを啓蒙から初期ロマン派までのタイムスパンで追跡した。その過程で、クニッゲ、シュライアーマッハーとならんで、カント、レッシング、ヘルダーの関連するテクストの分析を行った。 これと並行して、前年度までの『カルダーヌス弁護』、『人類歴史哲学考』の分析を踏まえて、レッシング、ヘルダーの多文化的思考の究明、多文化的思考と社交性のモチーフとの連関の検討を継続的に行った。レッシングに関しては、これらの作業を、『カルダーヌス弁護』から『アダム・ノイザー』を経て『賢者ナータン』に至る諸作品の展開過程の分析を遂行するなかで行った。ヘルダーに関しては、これらの作業を『人類歴史哲学考』から初期の作品に遡るなかで、また、カントのヘルダー批判を検討するなかで遂行した。 以上の作業とリンクさせて、森鴎外におけるレッシングとクニッゲの受容、和辻哲郎におけるヘルダー受容の解明の作業を継続的に行った。和辻哲郎におけるヘルダー受容に関しては独文の論文、Herders Ideen und Watsuji Tetsuro - Zur Geschichte der Herder-Wirkung im aussereuropaeischen Gebietを作成し、入稿、ドイツで出版の予定である。 以上の作業の遂行の過程で、18世紀ドイツ文学研究会、18世紀文芸表象研究会をそれぞれ複数回開催し研究成果の討議を行った。併せて、啓蒙研究・レッシング研究に関しドイツの研究者との討論の機会を持った。また、ベルリン国立図書館、ベルリン・フンボルト大学での資料調査を実施し、17世紀、18世紀の古典籍の複写、研究文献の収集の作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度末におけるベルリン国立図書館での文献調査・収集、年度を通しての関連学会・研究会での発表、討議、今年3月におけるベルリン国立図書館、ベルリン・フンボルト大学での文献調査・収集の成果をテクストの精読、資料の分析と組み合わせ、個々の論点の論文化の作業を順調に進めつつある。その成果の一部は、学会で発表し、また、独文での論文化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度として、これまでの成果を総括しながら、研究をまとめる。レッシング、ヘルダー、クニッゲ、さらには、これらに関連するカント、ゲーテ、シュライアーマッハー、ベールのテクスト分析の結果得られた論点を掘り下げ、補強する。 日本における受容に関しては、森鴎外と和辻哲郎を軸とし、それらを日本におけるレッシング、ヘルダー受容の全体の脈絡のなかでその位置と意義を考察する。 上記の研究の遂行のために、研究会の開催、国内外での資料・文献調査を継続して行う。
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