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2010 Fiscal Year Annual Research Report

死後出版小説の問題点と編集の正当性-プルーストの場合

Research Project

Project/Area Number 22520333
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

徳田 陽彦  早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (40126602)

Keywordsプルースト / 物語構造 / ヨーロッパ美術 / 忘却 / 無意志的記憶 / アルベルチーヌ / 未完小説 / 編集の問題性
Research Abstract

主要テーマである「忘却」は、話者の<私>の恋人であるアルベルチーヌが事故死してから話者の内的世界で生じる心的現象である。話者は第1段階、第2段階(以上パリにて)、第3段階(最終段階、ヴェネチアにて)と分けて物語を進めて.いる。しかし問題なのは、第2段階(アルベルチーヌの友人アンドレとの第二回目の会話-同性愛関係を告白-が発端)の時期である。プルーストは『失われた時』全般をつうじて物語の時間にかんする表現を明示することは少ないが、この「忘却」の段階にかんしても同様である。筆者はいくつかの叙述から、第2段階は第1段階の物語がまさに進行している期間に起きたと推論した。とすれば、作者はなぜこの時期の「忘却」現象を第1、第2段階と分別したのであろうか。そこで「忘却」の最終段階で語られる話者の心的現象から、その基準ともなり得るテーマを敢えて4つ抽出した(むろん、相互に交錯するテーマである以上、厳密にいえば4つに峻別可能かどうか問題であるが)。1.愛した存在の(イマージュにおける)蘇生不可能性。2.その存在を愛した<私>の死。新たな<私>の誕生。3.愛の完全なる終焉。4.無関心の完成。これらのテーマをプルーストの初期の作品から第六巻まで逆照射して、各時期の作品における表現の特徴を検証した。また第1段階では、2,3,4のテーマが全容ではなく、その前兆ともいうべき形で表現されている。しかし第2段階のエピソードはその内実が暖昧である。話者はアンドレの告白の真実を聞いても動転しなかった。つまりアルベルチーヌへの愛が終焉しつつあり、無関心が完成しつつあると強調したかったから、第2段階と設定したかもしれない。ただしプルーストが生き延びていれば、第2段階と明示しなかった可能性が大いにある。

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Published: 2012-07-19  

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