2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520341
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥 純 関西大学, 文学部, 教授 (00152413)
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Keywords | アラン・ロブ=グリエ / エグゾチスム / マルチニーク島 |
Research Abstract |
今年度は3年計画のうちの2年目であった。1年目には、研究全体の出発点となるマルチニーク島の現地調査を行い、ロブ=グリエの作品についての認識を修正することができたが、今年度は、1年目の調査・研究で得られた知見に基づき、初期から中期にかけての諸作品とそれらに関する資料の精査と再解釈を試みた。成果としては、作品の解釈を修正することのできた部分も多々あったが、何よりも、収集した資料の中から、ロブ=グリエが亡くなる数年前に放送されたラジオ番組での連続講演の記録を再発見できたことが極めて大きな成果であった。それはPreface a une vie d'ecrivainと題されたテキストであるが、エグゾチスムの概念のもとにロブ=グリエの作品を読み直すという今回の研究を行っていなければ、このテキストの重要性について、われわれが気づくことはなかったであろう。ロブ=グリエは、この連続講演の中で、長年にわたって蓄積してきたわれわれの作品の理解が、その基本においては間違っていないことを自らの言葉で立証してくれているし、また、われわれには疑問のまま残っていた解釈上の多くの問題を解決してくれており、さらには、後期作品の研究を行う指針まで提示してくれているのである。ロブ=グリエによれば、後期の諸作品は、三つのブロックに分かれて構成されているのだそうである。本研究では、今後、その中で中心となるブロックの作品分析を行い、ロブ=グリエの後期作品の理解と、それを通じて、人間の世界観のありかたについて多文化共生に関する重要な提言を見出したいと思っている。 以上の経緯について、平成23年12月17日に行われた「関西大学フランス語フランス文学会」で口頭発表を行った。また、この発表に資料や作品分析を加えて増補改訂し「アラン・ロブ=グリエにおけるエグゾチスム(4)」として論文にまとめ、本年7月に『関西大学文学論集』に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はロブ=グリエの後期作品を研究するための糸口をつかむことであるが、そのための重要な資料が見つかり、研究2年目で、後期作品を研究するための大きな指針を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究によって、ロブ=グリエの後期の作品は、中期以降の作品を発展させて展開した主要な物語作品群と自伝的な作品群、そしてそれらを総括して著した最後の作品『反復』の三つのブロックで構成されていることがわかった。本研究では、これらの三つのブロックすべてを研究することは不可能なので、主要な物語作品群の中からその典型となる作品を選んで分析を行なうことによって、後期作品研究への足がかりと、多文化共生に関するロブ=グリエの提言を読み取りたい。
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Research Products
(1 results)