2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520342
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
砂山 稔 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (00091702)
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Keywords | 道教 / 老子信仰 / 逍遙の思想 / 養生思想 / 長恨歌 / 白鶴 / 黄鶴 / 本草 |
Research Abstract |
23年度は、以前から進めてきた白氏文集(『白居易集箋校』全6巻、朱金城撰)の閲読を踏まえ、白居易の道教思想を最近の日本での研究を集めた「白居易研究年報」なども参考にしつつ検討した。 従来の見通しでは、白居易と道教思想との関係について考える際、中心にあったのは「長恨歌」に見える濃厚な道教的色彩の問題であった。そして、李白との対比の重点もそこにあった。 この観点も重要であるが、実際に文集を読んでみると、白居易と道教との関係は非常に広汎なもので、国家宗教としての道教との関わり、具体的には老子信仰・元始天尊信仰との関わり、儒教、仏教、道教の所謂三教論衡の問題と、個人レベルの道教に対する愛好、彼の「閑適」な生活の友としての道教に対する愛好とは、ひとまず区別して検討する必要があると思えてきた。この個人レベルの道教に対する愛好には、荘子思想、特に「逍遙」の思想に対する共感や、金丹への志向などがすぐさま挙げられるであろう。また、養生思想など宋代の文人達の道教信仰との近似も指摘できよう。23年度の研究を進める中で、就中、養生思想は非常に大事で、深澤一幸氏が「崔玄亮の道教生活」で言及しているような白居易と崔玄亮・劉禹錫の養生思想・医学思想の研究が特に重要であるように思われてきた。 23年度はまた、白鶴・黄鶴や牡丹、また本草が李白・白居易の詩文の中でどのように詠じられているかを検討したが、これは、24年度に継続していくことになろう。白鶴・黄鶴や牡丹、本草が唐詩全体でどのように詠じられているかも検討していきたい。 24年度の報告書は、初唐から盛唐までの道教と比較しながら、中晩唐の道教全体と宋代道教への展開を視野に入れたものを構想して行く事になるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災や定年退職の影響があり、計画以上の進展は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
白居易と李白の文学において道教がいかなる比重を占めていたかを考察するのが主要なテーマであるが、初唐から盛唐までの道教と比較しながら、中晩唐の道教全体と宋代道教への展開も念頭に入れて研究を推進して行く。
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