2011 Fiscal Year Annual Research Report
安徽省阜陽出土『蒼頡篇』漢簡に関する基礎的調査と研究
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22520344
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
張 娜麗 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20197635)
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Keywords | 阜陽漢簡 / 蒼頡篇 / 出土文献 |
Research Abstract |
本年度は、下記の通り、本課題と深くかかわりのある中国西北地方の甘粛省考古研究所所蔵の『蒼頡篇』(いわゆる「水泉子七言『蒼頡篇』簡)、北京大学所蔵の『蒼頡篇』の調査、研究、及びこれらの資料の阜陽漢簡『蒼頡篇』との対比研究を進めた。 1)夏期の海外渡航調査では、甘粛省考古研究所所蔵の『蒼頡篇』(「水泉子七言『蒼頡篇』」簡)漢簡資料を初めて実見、調査を試みた。その結果、対象とした約100点余(大半は残簡)の『蒼頡篇』原資料は、保存状態が不良のため、消失しかけた部分があることを知り得た。このため、この資料にかかわる旧写真を通して釈読、研究することが不可欠となり、関係者から関連写真の閲覧及び入手をはかった。幸いにも関係者の理解と協力のもとに入手し得た旧写真に基づき、阜陽漢簡『蒼頡篇』との比較可能な簡牘、及びこれを補足できる簡順の抽出が果たせた。時に、甘粛省考古研究所主催の国際シシポジウムが開催されたためこれに参加し、『蒼頡篇』関連の学術報告を聴取、問題点を剔出することもできた。 _2)春期の海外渡航調査では、.北京大学所蔵の『蒼頡篇』について再調査を試みた。当該資料は現在、1、2年後の公開、公刊を目指して整理作業を推進中であるが、その具体的状況の一部を確認することができた。ただし、多数知り得た原資料そのものについては、現在の未公開の原則に従って、暫時、公表等を控えねばならないこととなった。 3)二次にわたる海外渡航調査で取得した資料、及び国内での資料分析等で得られた情報を蓄積、形態的・古文書学的な情報を含めて可視データ化するとともに、阜陽漢簡『蒼頡篇』及び『蒼頡篇』原典の復元を目指したテキスト校訂作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、阜陽漢簡『蒼頡篇』原字の確定を進め、関連新資料(「水泉子七言『蒼頡篇』簡、北京大学所蔵の『蒼頡篇』簡)の実見を果たし、提供された資料の一部によって、諸先学の錯誤などを検出し、原典の一部の復元と分析に向けての基盤を概ね築けたため。
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Strategy for Future Research Activity |
未公開関連新出資料情報の取得、及び阜陽出土原簡の保存処理(脱水、漂白処理)による未公開期間の出来の問題はあるが、極力関係機関に働きかけ、情報の収集を図ると共に、現在までに獲得、集積できた原簡写真資料、また関連文書資料等を用いて、原書の隷定を果たし、これをデータ化して、語辞、述語、句文構造の解析を進め、『蒼頡篇』原典の変容の実態を闡明する予定。
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