2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520346
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
丁 貴連 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (80312859)
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Keywords | 有島武郎 / アメリカ留学 / ホイットマン / 韓国近代文学 / 廉想渉 / 金東仁 / 媒介者 / 受容と影響 |
Research Abstract |
本研究は、ホイットマンやイプセン、トルストイ、クロポトキン、ベルクソンなど西洋文学をモデルに日本の近代リアリズム文学の中の最高峰の一つと言われる作品を生み出した有島武郎が、韓国近代文学の成立に深くかかわっていた事実を明らかにすることによって日本近代文学の「媒介者」としての姿を浮き彫りにするのが目的である。研究初年度である本年度においては、主として研究の基礎となる資料収集と集めた資料の解読、ならびに作品の分析などを行った。本年度に行った具体的な内容とその意義は以下の通りである。 1. 具体的な内容 まず、有島武郎のアメリカ留学に関する資料と有島武郎の影響を受けた韓国の近代文学者の資料を収集するために、アメリカのハヴァフォート大学、ハーバード大学大学院、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館と韓国の高麗大学図書館、ソウル大学図書館、国立中央図書館を利用した。これらの大学と図書館では、本研究に必要な資料を多く閲覧できたばかりでなく、貴重な資料を収集することができた。次に、収集した資料を、先行研究と照らし合いながら解読および分析を行った。この作業によってこれまで不明とされていた事実を幾つか明らかにすることができた。三番目に、本研究テーマについて米国と韓国の有島武郎専門家と意見交換を行った。 2. 意義 以上、一年間にわたって行った資料収集及び閲覧、研究者との意見交換、そして資料解読及び作品分析は、西洋文学の一方的な受信者と知られる有島武郎が、韓国近代文学の成立に深くかかわっていたという事実を解明するにあたってなくてはならない重要な作業である。そのような機会をくださった科学研究費情助成金に深くお礼申し上げると同時に、その成果はこれから学会発表などを通じて順次紹介して行く予定である。
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