2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520353
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
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Keywords | 寺崎?洲 / 困譚 / 善謔随訳 / 漢文学 / 日本漢文体笑話 / 前戯録 / 版本調査 / 江戸小咄 |
Research Abstract |
本研究は、江戸中期頃から本格的に作られていった日本漢文体笑話本について、まず、その全体像を見るため、版本調査を行ったが、今年度は、その調査および作品読解に基づき、個別の作品の分析と特徴について考察した。 とりわけ、越中高岡の漢学者による笑話本『困譚』を、作品の特徴、作品成立の背景の面から考察し、「高岡の漢学者・寺崎?洲一その笑話「困譚」の世界」(『富山大学人文学部紀要』第55号)、「日本漢学者寺崎?洲與笑話集《困譚》」(『海外漢籍與中国文学研究国際学術研討会論文集』)としてまとめた。「困譚」に関しては、調査の中で草稿本も発見し、刊本以外の作品についても考察することが叶った。また、「困譚」の著者寺崎には、漢文笑話集「困譚」以外に漢文説話集・?洲餘珠」(笑話を含む)が存在することを確認し、地方都市における漢文受容の実態を具体的に考察しているところであり、この成果は次年度以降に発表する予定である。また、これら一連の研究成果および地方文化に与えた影響については、『江戸の笑い』(桂書房)として今春出版予定である。 一方、江戸中期の笑話本『善諺随訳』と『前戯録』についても考察を行ったが、前者の解釈と分析を中心とした成果は、『富山大学人文学部紀要』第56号に「『善謔随訳』を読む」と題して投稿中である。 このような一連の成果は、日本の漢文学の受容と展開、訓読の多様性、江戸小咄における漢文笑話の役割、地方における漢学振興と笑話の作用などの研究において、先行論著にない具体性と新奇性を備えていると確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文の発表数および新たな資料の発見など、おおむね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
個々の作品集の十分な読解及び類話間の影響について考察を継続する。
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