2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520353
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 漢文笑話 / 江戸時代 / へん譚 / 前戯録 / 善謔随訳 / 笑堂福聚 / 中国笑話 |
Research Abstract |
本研究の目的は、主に、①江戸中期頃から本格的に作られた日本漢文体笑話小説を取り上げ、まず、作品の種類と版本について具体的に把握する。次に②特徴的作品集をとりあげ、作者および作品の出典、江戸小咄との影響関係を検討する。同時に、③当時日本に輸入された中国笑話書の版本、その和刻本の調査により、書誌・蔵書などからも漢文笑話の文学的バックボーンを実証的に示すことであった。 24年度は、昨年度から進めてきた漢文笑話集『へん譚』に関する考察を『漢文で熟した富山の文化 江戸の笑い』として上梓し、『へん譚』の特徴を解明したのみならず、漢文笑話の広がり及び正確な漢文を書くことの地方における苦心、『へん譚』を出版するに至った経緯と、作者の編集意図を明かにした。 また、漢文笑話集『善謔随訳』について、各話の特徴、江戸小咄および中国笑話との影響関係を実証的に示し、『富山大学人文学部紀要』に「『善謔随訳』を読む(一)」と題する論考を発表した。 一方、『前戯録』の全作品についても解説を試み、やはり各話の特徴、江戸小咄および中国笑話との影響関係を実証的に示し、出版に至る経緯と作者の編集意図を探った。また、『前戯録』が出版された明和前後の京都の狂詩狂文界を考察の視点に加え、本作品が狂詩狂文世界を背景に中国の文学形式を模倣して成立したものであると結論した(『富山大学人文学部紀要』第58号に投稿中)。 加えて、『笑堂福聚』の解読に取り掛かっている。これによって、江戸時代の代表的漢文笑話の特徴およびその文学史的意味を明かにできたものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究期間において、論文6編(うち2本は中国で発表)および著書一冊を上梓し、所期の目的である漢文笑話テキストの調査・解読を計画通りに進めてきた。加えて、いわゆる漢文笑話以外に漢文で記された筆記類にも多くの笑話が取り入れられていること等、新たな発見もあり、今後の江戸漢文研究の展開につながる成果を出し得ると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、本研究の最終年度に当たる。未だ考察し終えていない幾つかの江戸漢文笑話集の解明と共に、中国笑話との比較の視点によって、日本の江戸漢文笑話の特徴を明確にすることに力を注ぎたい。また、漢文笑話の作家について、日中笑話作品の作者の比較による日本側作家の特徴、漢文笑話編纂の意図についてまとめたい。加えて、笑話が収められている筆記類の調査も並行して行い今後の研究に繋げたい。
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