2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハーンとアルトーを巡る比較文学研究―ハーンの文学的遺産はいかに継承されたか
Project/Area Number |
22520356
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大貫 徹 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (30203871)
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Keywords | ラフカディオ・ハーン / アントナン・アルトー / ファン・ゴッホ / サミュエル・ベケット / 耳なし芳一 / 異界 / 外部 / 比較文学 |
Research Abstract |
「20世紀におけるハーンの文学的遺産の継承」という観点を深めるため、22年度は、ラフカディオ・ハーンの代表作である『耳なし芳一』と、アントナン・アルトーが(マルク・ロジェ氏による仏訳を土台に)『耳なし芳一』を自由に翻案した作品『哀れな楽師の驚異の冒険』との詳細な比較検討を行ったが、23年度は、まず、この実証的な作業を通じて生まれた成果を積極的に発表することに努めた。具体的には以下の通りである。 ひとつは、平成23年6月30日に新曜社から刊行した単著『「外部」遭遇文学論』の第二章に「『耳なし芳一』の物語を巡って-ハーン、アルトー、ゴッホ」というタイトルで論文を収録した。もうひとつは、平成23年11月26日に、日本比較文学会第32回大会中部大会において、招待パネラーとして「<異界>を巡る考察-ハーン、アルトー、ベケット」という口頭発表を行った。前者は、ハーン作品の読解を経て継承した「異界への視線」を自分のものとしたアルトーが、その約25年後に、画家ファン・ゴッホの作品のなかに、自分と同質の「異界への視線」を見出す様子を詳しく論じたものである。後者は、ハーンとアルトーの比較検討を踏まえ、その結果、ベケットにも同質の眼差しがあるのではないかと論じたものである。 また、23年度は、上記の成果発表とは別に、アルトーがこの翻案を経てどのようにその後のアルトー世界を構築していったかという、いわばアルトーのモノグラフ的な観点からの研究も進めた。それは、アルトーが、ハーン文学の精髄である「異界との接触」というテーマをどのように展開したのかという大きな問題を解く上できわめて重要な作業だからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単著として刊行した『「外部」遭遇文学論』の第二章に、「『耳なし芳一』の物語を巡って-ハーン、アルトー、ゴッホ」というタイトルの成果論文を収録したことと、日本比較文学会第32回大会中部大会において招待パネラーとして「<異界>を巡る考察-ハーン、アルトー、ベケット」というタイトルで口頭による成果発表を行い、それぞれに、ある程度の評価を得たから。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実証的研究を踏まえ、今後は、フランス人作家アントナン・アルトーが、ハーン作品の翻案を経て、どのようにその後のアルトー世界を構築していったかという観点からの研究をさらに推進する予定である。それは、本研究課題の最大のテーマである、アルトーが、ハーン文学の精髄である「異界との接触」という主題をどのように継承し、それをアルトーの文学世界の中にどのように組み込み、発展させていったのかという点を解明する上での第一歩となるからである。
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Research Products
(4 results)