2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520364
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 不二明 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (70152353)
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Keywords | 「枕中記」 / 「南柯太守伝」 / 唐代伝奇 / 黄庭堅 / 范成大 / 陸游 / 夢物語 / 芭蕉 |
Research Abstract |
平成23年度(23年4月1日~24年3月31日は、昨年度の基礎的な研究成果を踏まえ、宋代詩人(黄庭堅・范成大・陸游など)にみられる唐代伝奇小説「枕中記」「南柯太守伝」などの影響を総合的に調査し、具体的個別的な分析をおこなった。 黄庭堅に関しては、詩文や詞などに幅広く影響の痕跡を認めることができ、「荘子」の思想的な影響と並んで詩人の人生観に大きなインパクトを与えていたことが判明した。「荘子」の胡蝶の夢の故事と「南柯太守伝」は彼の詩文の随所に取り込まれ、終生大きなテーマとして繰り返し詠われている。北宋のみならず宋代でも屈指の影響の強さを指摘できよう。 范成大に関しては、若年の詩にその影響が著しくみられた。人生を夢の如しとみる達観は、少年時代に父を失った彼の生い立ちと、深く関係していたであろうことが推測される。 陸游はその詩の圧倒的な多さもあって、「枕中記」「南柯太守伝」を踏まえた用例が数多くみられるが、その割にはどちらかといえば否定的な用例が目立つのが特徴的である。夢を求めることに否定的な傾向がみられるのである。これは彼の引退後の農村での生活と関係していることは間違いない。地に足をつけた生活者の陸游にとっては、唐代伝奇の夢物語はそれほど関心を引かなかったのであろう。 劉克荘も多作の詩人であるが、官僚生活が長かったこともあってか、文学的な故事としてとりこんでいるものの、自分の人生観と密接にかかわるような切実なテーマとして「枕中記」「南柯太守伝」などが使われている形跡はみられないようである。 なお黄庭堅や「荘子」の影響の強い江戸時代の松尾芭蕉をめぐって、「枕中記」「南柯太守伝」の影響がみられることを今年度の研究で具体的に指摘できたのは、派生的な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の研究目的の達成にむけて、調査から分析考察、さらに論文作成まで、ほぼとどこおりなく進んでいるから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は南宋詩人を中心に調査をすすめ、永嘉の四霊や劉克荘や文天祥など中後期の詩人をさらに深く分析していきたい。また同じく中後期の群小詩人や禅僧たちについても詳しい調査をおこないたい。禅僧たちの詩には、「枕中記」や「南柯太守伝」の影響が強くあらわれていることが予想されるからである。
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Research Products
(2 results)