2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520364
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 不二明 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (70152353)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 枕中記 / 夢物語 / 唐代伝奇 / 宋詩 |
Research Abstract |
平成24年度は、過去2年間の基礎的、発展的な研究成果を踏まえて、唐代伝奇の中でももっとも代表的な小説である沈既済「枕中記」を標準的な指標としてとりあげ、北宋から南宋にいたるまでの宋詩の典故としての受容のしかたを分析した。 具体的には王安石・蘇軾・黄庭堅・范成大・陸游・劉克荘などの詩人の作品を詳細に検討し、分析考察した。王氏の場合は「枕中記」に対して表面的な典故の用例に終始しておろ、深い共感はみられなかった。あくまで小説のような二次的なものにも博識をほこるような姿勢が認められる。次の蘇・黄になると、二人の荘子の思想に対する愛着も関係して、この小説の現世に対する批判的な側面を評価するような用例が多くみられた。単なる卑俗な小説としてではなく、官僚としての生き方をそこに投影して読み込んでいたことがわかる。 南宋では、逆に陸氏は、この作品の栄耀栄華を願望する世俗的な側面を否定し、自己の人生と相反するものとみなした。劉克荘は挽歌などの追悼に際して、この「枕中記」の用例を用いているが、世俗の浮華の象徴としてのきわめて特殊な典故になっている。現世での成功や栄誉をむなしいものと位置づけ、それゆえ死者を祝福するという用例は、ある意味この作品の一つの極限的な受容を示すものである。 こうした宋一代の「枕中記」の受容の例をたどることで、この伝奇小説が如何に宋代士人たちの精神の深みに届き、人生観と複雑に交錯したかが、具体的に解明され、本年度の総括的な研究成果として提示できたのではないかと考える。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)