2012 Fiscal Year Annual Research Report
漱石文学における老子の哲学と『文選』の神話についての研究
Project/Area Number |
22520369
|
Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
李 哲権 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (70306455)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
|
Keywords | 夏目漱石 / 老子哲学 / 水の女 / 文選 / 神話 / 神話的な文学 / 哲学的な文学 / 文学的な哲学 |
Research Abstract |
引き続き、中国の文学、神話、哲学についての資料収集や現地調査を兼ねた出張を行った。ほかに、研究成果を広く社会に知らしめるために、中国の学会において発表を行ったり、漱石関係の書評の場を借りて、研究成果の一端を反映させたりした。 漱石の文学が中国の神話、特に『文選』の「楚夢」と深い関係があることはすでに申請者の既発表のいくつかの論文によって論証されている。24年度は、引き続き中国の神話と漱石文学との影響関係を調べるほかに、おもに神話的な記述の文学への置き換えという視点で、日本の神話にも目を配るようにした。その結果、漱石文学における神話の影響は中国の神話だけでなく、日本の神話、たとえば『古事記』の雄略天皇にまつわる「水の女」(=見目麗しい童女と描写される「巫女」)や折口信夫の「境界」という民俗学的な視点から提示する日本的といわれる「水の女」(水辺の小屋で一晩中機を織りながら川や海を渡ってくる遠来の客=異人「マレビト」を待つ女)とも関わるのではないかという新しい展望が開けてきた。漱石的「水の女」は中国、日本、西洋といったさまざまな国や民族の神話や伝説が絡み合ってできた混合体的性質を有したものであること、そのために漱石文学は単に難解な老師の哲学を文学的言語で語り直した「哲学的な文学」、「神話的な文学」ではないという新たな認識に至った。 したがって、これからの発展的な研究は、以上のような日本の神話や民俗学の研究成果を取り入れ、反映させた、もっと広い視野に立ったものになるだろうと予測される。現在、この新しい認識を形にするために、今日までとは方向性の異なった資料収集に着手している。平成25年度中に論文にまとめ、本研究の研究成果とする計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(4 results)