2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世初期の和刻本と朝鮮版漢籍との関係についての研究
Project/Area Number |
22520370
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
長尾 直茂 上智大学, 文学部, 教授 (30323182)
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Keywords | 和刻本 / 朝鮮本 / 韓本 / 漢籍 / 日韓の漢籍流通 / 日韓文化交渉 / 世説新語補 / 世説新語 |
Research Abstract |
本研究費補助金交付の採択が当該年度の後半に決定されたので、限られた期間内で来年度以降の研究遂行のための研究環境の構築に主たる力点を置いた。まず研究対象とする朝鮮版漢籍の所在を、各図書館・資料館の目録や藤本幸夫編『日本現存朝鮮本研究 集部』(京都大学出版会、2006年刊)等に拠りつつ確認し、それらを出来うる限り実際に調査し、必要に応じて複写(デジタルカメラ等を用いる写真複写など)して独自のデータベースを作成することに努めた。この過程の中で今後の主な調査・研究対象として『世説新語補』を取り上げることにした。 『世説新語補』は、南朝宋・劉義慶『世説新語』に、明・何良俊『語林』より挿話を増補して再構築した書籍で、明代万暦期以降に成立したものである。それが早くに朝鮮半島へと入り、当地で版木に彫られて刊行された。こうした朝鮮版の善本としては、天理図書館に所蔵される今西文庫所蔵本、その他二三のテキストが知られる。また和刻本は元禄七年に京都の書肆文会堂より刊行されており、通行本として江戸時代以降世に流布した。この両者を対照させて精査することで、朝鮮版の漢籍と和刻本との影響関係を示す一つのモデルケースとすることを考えたのである。すでに当該年度に天理図書館所蔵本の『世説新語補』は写真複写をすませており、元禄七年刊の和刻本も入手済みで、現時点で両者を比較対照させる作業にも着手して、現在両者の対象表を作成中である。
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