2012 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル伝承文化における馬の隠喩の解明―遊牧文化における馬の隠喩研究―
Project/Area Number |
22520377
|
Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
藤井 麻湖(藤井真湖) 愛知淑徳大学, 交流文化学部, 准教授 (90410828)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 馬 / 隠喩 / 元朝秘史 / チンギス・ハーン / モンゴル / 内蒙古自治区 |
Research Abstract |
学会発表については、2012年度7月23日~26日におこなわれた第5回ウランバートル日モ国際シンポジウムにおいて、『元朝秘史』(以下、秘史)における「語り手」の候補者についての発表をおこなった。これは、本研究においての外堀を埋める重要な考察である。なぜなら、秘史の「語り手」は、チンギス・ハーンの非正妻たちに好意的であったため、秘史における彼女たちの叙述を受け持ったと思しき「語り手」の研究は当然ながら、馬は非正妻を表す隠喩となっているのではないかという仮説を展開しようとする本研究と密接に関わっているからである。すなわち、一見無関係に見えるものの、秘史の「語り手」研究は、本研究の馬の隠喩研究と深い連続性の中でとらえらる必要があるのである。とくに、本研究課題である『チンギス・ハーンの二頭の駿馬』研究には、チンギス・ハーンが絡んでいるので、秘史との連動的な視野が欠かせない。この秘史研究についても、「語り手」についての論文をもとにさらなる展開ができるということを示した論文を発表できたことも成果と考える。この国際シンポジウムで発表した論文は『チンギス・ハーン及びモンゴル帝国:第5回ウランバートル国際シンポジウム2012.07.24-26』というシンポジウム論集に日本語およびそのモンゴル語翻訳が刊行されることになっている(2月に刊行予定であったが刊行が遅れている)。 そのほか、馬の隠喩研究の嚆矢ともなった私の研究を名古屋大学において「モンゴルの馬―馬頭琴伝説からみた馬の隠喩―」というタイトルで発表できたことは社会還元として意味あることだと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第一には、2011年度に国立民族学博物館でおこなわれたシンポジウムで発表した論文が海外からの参加研究者の論文ボリュームが多いためにシンポジウム論集に掲載してもらえなかったことから、本研究課題の柱のひとつである『チンギス・ハーンの二頭の駿馬』研究の前提研究論文がないために、その後の論文が続けることができないでいる、ということがある。また、その後、参照する写本の数が増えたために、すでに執筆した論文にその考察を含ませようとすると、再編成が必要となったためである。 第二には、本研究のもうひとつの柱である『黒馬』研究の基礎資料をなかなか増やせないでいるため、こちらの研究を本格的に行えていない、ということがある。 第三には、『元朝秘史』研究は本研究と密接な関係にあることは明らかであるが、実際にはそのようには学会では認識されていない。第一と第二による理由も重なり、このことを払しょくするために、まず『元朝秘史』の研究を発表するほうが本研究課題を推進するのに有利と思われたことと、偶然、チンギス・ハーン関連のシンポジウムへの勧誘があり、一見『元朝秘史』の研究に重点が置かれてしまったことがある。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」に示した第一の理由を払しょくするために、『国立民族学博物館研究報告』(レフリー付)に別途提出したところ、条件付きで掲載可という返答をもらっている。本論文には新資料を加えていないのであるが、この資料はまた別の機会を待って取り扱うことにし、まずはシンポジウムの成果を活字に残すことに専念する。 第二に記した『黒馬』研究は、現在手元にある資料で、当面の課題を活字に残して学会に問うことを目指したい。 第三に記した『元朝秘史』研究との関連領域については、優先順位として最後に残し、中核的研究に集中力を傾注していきたいと考える。
|
Research Products
(6 results)