2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の語彙と構文の分析から体系化する語彙推意と構文推意の理論
Project/Area Number |
22520382
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 重広 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (40283048)
|
Keywords | 構文 / 推意 / 語彙 / 日本語 / 語用論 |
Research Abstract |
本研究は,日本語を対象言語として,構文レベルの推意と語彙レベルの推意にわけて,データの蓄積・データの分析・理論的分析・類型化・一般化などを行い,文法化や言語構造の普遍性に関する理解を深めて,語用論的な研究の枠組みに対する再構築の提言を行うことを目的としている。3カ年の計画の初年度にあたる本年度の計画では,構文推意に関わるデータの収集と先行研究の整理を行い,計画以前の成果を本研究に取り込む作業を予定しており,あわせて,語用論的研究基盤に関わる全体的研究と,語彙レベルの推意研究の準備作業を進めることになっていたものであるが,これらはおおむね計画通り進行している。特に,構文推意については,可能過去の遂行読みが一定の普遍性を持つことと遂行過去との共存が持つ意味を,主にネオグライス語用論の立場から明らかにすることができた。また,前提条件との関連でも類型化することが可能であり,種々のモダリティ表現と関連づけて分析して整理できることも明らかになった。あわせて,テンスでもアスペクトでもない「た」のモダリティ用法から,「た」そのものの意味を統一的に記述すること,日本語における形式名詞が関わる文法化がいくつかの普遍的特徴と関わっていることについても研究成果の発表が可能な状況になっており,そのなかの簡単な原則や基本的な考え方については,本年度執筆の論文で述べているが,さらに詳しく掘り下げた内容を次年度以降発表するため準備を進めている。そのなかの「節減少」や「非節化」の考え方は,日本語が右方述部の言語であるという類型的特性と関わり,S-o-M原理(意味優位原理)は文法化の動機に関わる普遍的な考え方であり,言語研究全体に貢献する可能性を持つ重要な提言であると考えられる。
|