2011 Fiscal Year Annual Research Report
調和文法に基づいた印欧諸語の曲用パラダイムの共時的変異および通時的変化の統合的研究
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22520385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 渉 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (90293117)
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Keywords | 調和文法 / 最適性理論 / パラダイム / 格 / 形態論 / 屈折 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、印欧諸語における名詞類(名詞・限定詞・形容詞)の屈折パラダイムを記述するために提案された(パラダイムを構成する)格・数・ジェンダーの3次元に関わる制約群から導く作業を行った。 具体的には、有標性階層(格階層・数階層・ジェンダー階層)から導いた有標性制約及びそれらに括抗する2種類の忠実性制約のランキング/重みづけから、ロシア語、ポーランド語等に代表されるスラヴ諸語のパラダイムの一部を派生した。特に、多くのスラヴ諸語の屈折パラダイムに観察される格融合(属格=対格)を格階層が体現する有標性及び格標識の本来的な生起領域(属格=名詞、対格及び能格=節)に関わる制約間の交互作用から導くことを提案した。 ただし、属格の本来的な生起領域を名詞と指定すると、多くのスラヴ諸語に見られる「否定の属格/内包の属格」用法を説明する課題が残る。これらの用法は他動詞文の目的語及び一部の非対格文の主語の両方に現れるが、両者は共に(役割指示文法のタームを使用すると)非指示的な受動者としてまとめることができる。ここで、対格標識(無標)と属格標識(有標)の形式面の有票性が名詞句の意味的側面(指示的名詞⇔非指示的名詞)の有標性と平行していることに着目し、非指示的受動者をマークする属格標識を関係的な類像性から導くことを提案した。 以上の作業を通して、属格・対格間の格融合を伴うスラヴ諸語の屈折パラダイムを記述する基礎を構築できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データベースの構築に際して必要な知識の習得する時間が予想外にかかっている。データを資料から採取する作業がデータの欠落等のために予定よりも進まなくなっていることも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は蓄積したパラダイムのデータを整理してデータベース化し、個別の言語のパラダイムの中で一般的な意義を持つと思われるものを一般性の高い制約群の重み付け/ランキングから導くと共に、データベースから得られる一般化を追求する予定である。
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Research Products
(4 results)