2012 Fiscal Year Annual Research Report
構文理論・用法基盤アプローチによる語彙と構文彙の統合的研究
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22520391
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 聖子 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70165330)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 構文理論 / 用法基盤アプローチ / 語彙と構文彙 / フレーム意味論 / 接続表現 / 支援動詞構文 / 複合辞 / 言語獲得 |
Research Abstract |
本研究では、構文理論および用法基盤モデルに基づき、言語知識における「語彙」知識と「構文」知識とを乖離した知識と見なさず両者の統合現象に着目し、言語使用・言語獲得・学習のコーパスデータを用いた分析を通して、「語彙と構文」両者の統合的知識を理論的かつ実証的に探究する。「語彙と構文」の統合的知識を分析し解明するための理論的考察を深めつつ、コーパスデータを用いて、日英語における「語彙と構文」両者の統合的知識を分析・記述する代表的事例研究を行ってきている。 2012年度は、フレーム意味論と構文理論に基づく語彙意味論・項構造構文の分析として、(1)英語と日本語におけるに分離動詞、特にBREAK CUT「こわす」「 切る」「わる」「おる」等の語彙の形成する構文を分析し、(1A)字義的・物理的意味の分析に加えて、(1B)比喩的意味拡張の分析を進めた。同時に、(2)条件構文における語彙と構文の分析や、(3)大規模均衡コーパスを用いて所謂引用助詞「と」が標識する「語彙と構文彙」の分析を進めた。さらに、(4) in that’構文の分析の発展として、英語のadjunctの項構造構文との関係の分析を進めた。また、第一言語獲得および第二言語習得においても、研究室の博士論文・修士論文として「語彙と構文」統合的知識の習得・学習に関する事例研究を進めてきている。さらに日本語教育領域においても、日本語テーマ別中級教科書(藤井)のテクストを用いて「構文と語彙」の教材開発を行い、既存の教科書や分析で十分記述されていない構文の分析と「構文彙」の構築を進めた。 (1A)をConceptual Structure, Discourse, and Language において、(2) (4)を構文理論国際学会において、(3) をJapanese/Korean Linguistics学会において、成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「語彙と構文」の統合的知識を分析するための理論的考察と合わせ、子供の第一言語獲得論において「語彙と構文」の発達・習得を分析するための理論的枠組みと研究概要を藤井(2010)において論じ刊行した。 日本語・英語のコーパスを用いた「語彙と構文」の分析に関して、「研究実績の概要」で示した分析(1)(2)(3)(4)等の分析を進め成果をあげてきており、それぞれの成果を国際学会で発表(または2013年度国際学会へ投稿)した。 具体的には、(1)の(1A)に関して、Conceptual Structure, Discourse, and Language Conferenceに採択され、2012年度に国際学会で口頭発表し、その学術論文をCSLIからのCSDL出版に査読の結果採択され改稿中、2013年度に刊行予定である。(1)の(1B)に関しても、国際学会International Cognitive Linguistics Conference (ICLC: 2013年6月, カナダ アルバーター大学)に既に採択され、発表予定である。(2)に関して、一部成果をInternational Pragmatics Conference (Manchester, 2011) で発表し、別の観点から"Dynamics of Insubordination"に関する国際シンポジウムで招待講演を行った。2013年度にも、論理語の意味論・語用論の観点からInternational Congress of Linguists(ジュネーブ大)で発表予定である。 (3) 引用構文の「語彙と構文彙」の分析に関しては、2012年度までに、国内外の学会で日本語および英語で発表してきており、2012年度にはJapanese/Korean Linguisticsに査読の結果採択され、発表した論文も完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の発表を行う。 2013年度の国際学会での発表計画:International Cognitive Linguistics Conference (ICLC: 2013年6月, カナダ アルバーター大学 既に採択); International Congress of Linguists (CIL 2013 7月, スイス ジュネーブ大学 既に採択)等において論文を発表する。 2012年度までは、研究成果を国際学会に発表論文として投稿し、口頭発表を中心に行ってきたが、2013年度はこれまで国際学会で発表し議論してきた研究成果の執筆論文も完成する。 「研究実績の概要」で示した(1)(2)(3)(4)それぞれのとりまとめを行う。特に(1)の研究のためには、本務大学の授業の行われない夏期期間にカリフォルニア大学バークレー校言語学科にて共同研究者等と恊働・ディスカッションをし、(1)の研究のとりまとめと論文執筆を行う。
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Research Products
(10 results)