2011 Fiscal Year Annual Research Report
複文構造の認知モデル研究:構文カテゴリの精緻化に向けて
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22520392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大堀 壽夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20176994)
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Keywords | 複文 / 認知言語学 / 節の統合性 / 意味類型 / 構文理論 |
Research Abstract |
複文の類型と意味構造について、データ収集と分析、および考察を進めた。主な成果は以下のとおりである。 (a)論文発表:複文の文法化についての研究が、The Oxford Handbook of Grammaticalizationの一部として公刊された。複文構造のカテゴリーの1つである理由文について、英語のthat's whyという表現の機能をコーパスを用いつつ談話の相互作用の観点から明らかにした論文が公刊された。中断節構文について、新たに文法構造における再帰性という問題設定から,考察を行い、国際学会(Evolang 9)で口頭発表を行った。以上を通じて、個別事例から一般的議論への展開を行っている。 (b)データのアーカイブ化と研究組織:自由会話データの基本的な処理を終え、公開可能な状態にする作業をほぼ終えた。新たにビデオカメラと高品質録音機材による長時間の自由会話の録音を行い、基礎的な書き起こしを進めた。談話データから見た複文構造の意味・機能の研究のための研究組織を、大野剛(アルバータ大学)、鈴木亮子(慶應義塾大学)、岩崎勝一(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)らとの協力のもと、より精度の高い構文研究の具体化をはかっている。 (c)海外の研究者との交流:Holger Diessel(イエナ大学)との共同研究のための意見交換を行った。コーパスデータによる頻度分布や文脈情報をも取り入れた類型論的研究は、先行研究がきわめて限られており、この方面で先端的な成果を上げるべく、構文の選択、類型論的に妥当なコーディング方法などについて、建設的な議論を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複文の1カテゴリーである理由文についての研究論文を発表した。また、中断節構文についても国際学会での発表を含め、研究が進展した。会話データのアーカイブ化については、平成23年度中に終わらなかったが、平成24年度前半にはモニタ版公開とそれに基づく研究の推進に注力する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究基盤をふまえ、構文研究を深化させ、より積極的な成果公開をはかる。(a)処理の済んだ会話データをモニタ用として年度前半に公開し、データ共用による共同プロジェクトの具体化をはかる。(b)節の統合性の観点から、複文の類型について意味・形式の両面から考察し、論文の形にする。特に認知意味論の成果を生かしつつ、諸言語に通底する一般的モデル構築を行う。(c)中断節構文の類型化について、成果を発表する(国際シンポジウムでの発表を予定)。
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