2012 Fiscal Year Annual Research Report
複文構造の認知モデル研究:構文カテゴリの精緻化に向けて
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22520392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大堀 壽夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20176994)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複文 / 認知言語学 / 節の統合性 / 意味類型 / 構文理論 |
Research Abstract |
複文の類型と意味構造について、研究を深化させ、その成果の公開につとめた。主な成果は以下のとおりである。 (a) 論文発表:複文の類型についての研究が『国語と国文学』に掲載された。談話コンテクストの中で見た構文の機能を考察した論文が『構文と意味』の掲載された。この論文は、これまでなかった観点から構文研究、とりわけ複合的構造の分析を提案したものである。また、国際シンポジウムや学会での研究発表(英語による発表を含む)を行った。日本英語学会での特別ワークショップ「Typology of event semantics and argument encoding」の主催(英語による発表)を担当した。 (b) 中断節構文について、アンケート調査を実施した。細部の分析と結果の公開は次年度の課題となるが、文法化の二通りの経路(文脈依存性の高いものと、イディオム性の強い構文の定着化)の相違をめぐる仮説について、興味深い結果が得られた。 (c) 国内外の研究者との意見交換と組織作り:本研究のバックボーンの一つである認知意味論・機能的類型論の研究者たちとの交流を進めた。同時に、談話コーパスを利用した構文研究、および頻度情報・文脈情報も組み入れた類型論研究の方向性について議論を行った。William Croft(ニューメキシコ大学)、大野剛(アルバータ大学)、鈴木亮子(慶應義塾大学)、古賀裕章(慶應義塾大学)、秋田喜美(大阪大学)、中村渉(東北大学)らとワークショプを行い、また今後の組織作りと研究推進について建設的な議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複文の類型については、国立国語研究所のシンポジウムにおいて研究成果を発表し、認知・機能言語学と国語学・日本語学研究者の先端的研究者の間で有意義な意見交換がなされた。同時に、談話コーパスを使った構文研究への展開の可能性を検討した。その成果の一端を論文として公刊した。中断節構文については、N. Evans氏と渡辺己氏の共催による国際シンポジウムで論文を発表し、きわめて有意義な意見交換と、構文の本質についての理解の深化が達成された。特に文法化の経路についての仮説に支持が得られた。さらなる研究成果を公開し、共同研究の方向を確立すべく、いくつかの研究機関の先端的研究者と研究組織の形成について討論した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をより広く公開・発信していくと同時に、新たに発展させるべき研究課題を明確にしていく。具体的には、(a) 複文の類型についての研究成果を論文の形で公刊する。(b) 中断節構文を談話機能の観点からさらに考察し、他の言語との比較を通じて、その現象の個別的側面と一般的側面の切り分けを明らかにする。また、新たな研究課題として、中断節の言語習得における習得順序やその背後にあるメカニズムについて考察する。(c) 主節・従属節の区別、および両者の段階性についてより深い理解を可能とするため、いわゆる「主節現象」について、(a)-(b)の成果をふまえつつ、認知・機能的理論にどのような扱いが可能かを調べていく。
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Research Products
(8 results)