2011 Fiscal Year Annual Research Report
共参照関係を利用した対話プロセス研究と対話型言語教材の開発
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22520395
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉田 悦子 三重大学, 人文学部, 教授 (00240276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹井 光子 広島修道大学, 法学部, 教授 (80412287)
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Keywords | 語用論 / 指示表現 / 言い淀み / 対話 / 談話 |
Research Abstract |
2年目の研究計画は、タグ付与作業とコーパス分析を通して、対話コーパスにおける自然発話理解のプロセスを明らかにすることであった。タグ付与作業は、共参照関係の推移が把握できるよう試行的に進めているが、まだ部分的に未完成である。すでに予想されたように、対話には、共参照関係の表面的な記述だけではカバーしきれない談話構造上の複雑さの問題があり、一貫性の度合いが一見低いように見える原因になっている。しかしながら、共参照関係のつながりを考慮することで話題の焦点を特定しやすくなり、入れ子のようになっている対話構造をひもときながら作業することが有益であることがわかってきた。さらに、対話においては、共参照関係が十分に確立されないまま、次の共参照関係の構築に移るという傾向があり、話題となる要素の推移もより頻繁に起こっている。こうした推移パターンのふるまいを全体のコーパス分析には取りこんでいくことは重要であり、対話構造の階層性を明らかにすることは意義がある。 また、談話単位の前後では、ほぼ確実に、流暢さに欠ける発話(Disfluencies)や不連続な談話要素(Discontinuous elements)が生じている。こうしたいわば話題と話題の推移する狭間で現れてくる現象には、語用論的推論を介して照応関係が理解される間接照応の現象もあり、メトニミー的照応と合わせて,両者を統一して分析する必要がある。国際語用論学会2011年大会(マンチェスター)では、日英のデータに基づいた照応関係と対話特有の現象についての考察とその語用論的役割について発表した。しかしながら、日英対話の発話者同士が情報を共有していく基盤化形成の過程には、こうした複数の共参照関係の現象がかかわっていることを単著において論じることができたことは、この時点での成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的なコーパス分析の成果までは記述できなかったが、部分的なタグ付与による質的分析から対話における共参照関係を記述する問題点と重要性が明らかになった。対話における共参照表現の特徴についてもかなりの事例を含めることができたので、そのタイプに応じて強い結束性と弱い結束性などスケールを設定し、優先順位をつけながら、コーパス分析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、共参照関係のタグ付けの完成が第一であるが、日英語の差異について相互に比較可能なコーパス分析が完了した時点で、全体の分析結果と照らし合わせながら、対話理解モデルを提案したい。そのためには、話題となる要素の推移パターンのふるまいをモデル化できるような全体のコーパス分析を早急に進め、共参照現象の分析方法について検討を進めたい。さらに、質的分析も進めながら、日英語対話コーパスを利用した対話型言語教育への応用にも着手する予定である。.
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Research Products
(2 results)