2010 Fiscal Year Annual Research Report
名詞句に関する東アジア言語を主とする比較統語論的研究
Project/Area Number |
22520397
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 陽一 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (50301271)
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Keywords | 名詞句 / 生成文法 / 関係節 / 数量詞 / Distributive Phrase / 名詞句削除 / 数詞 |
Research Abstract |
平成22年度は、以下の2点に関して「個別言語の記述」ならびに「比較対照研究」を行った。 1. 各種修飾語句によって引き起こされるNP削除の可能性と名詞句内の機能範疇の働き 中国語では原則的に関係節がNP削除を誘発することが可能であるが、「理由」・「方法」を主要部に持つ関係節の場合にはNP削除が許されない(Aoun and Li 2003, Huang, Li, and Li 2009)。これに対して、日本語では、Saito, Lin, and Murasugi (2008)によれば、関係節がNP削除を誘発することはない。本年度は、まず、中国語に関する事実がSaito, Lin, and Murasugi (2008)の分析から自然に導き出されることを明らかにした。更に、日本語で中国語と同様の分析が採用できないのは、日本語の関係節の述語が連体形であることに起因すると示唆した。 2. 数詞(Classifier Phrase)の解釈と名詞句内の機能範疇の有無と働き 本年度は、日本語の「数詞+ずつ」をドラビダ語族の言語と比較した。ドラビダ語族の言語では、「数詞+ずつ」の解釈を「数詞+数詞」で表わすが、データ収集の結果、個人差はあるものの、「数詞+ずつ」と「数詞+数詞」では概ね、同じような振る舞いをすることが明らかになった。特に、当該要素が主語位置に生成された場合、述語がstage-levelかindividual-levelかによって同様の文法性の差が生じることがわかった。この点を含む「数詞+ずつ」ならびに「数詞+数詞」の特徴を統一的に捉えるため、本研究では、名詞句内の機能範疇としてDistributive Phraseを仮定し、「数詞+ずつ」ならびに「数詞+数詞」を含む文においては、統語的にDistributive Opの移動が起こると主張した。
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