2011 Fiscal Year Annual Research Report
名詞句に関する東アジア言語を主とする比較統語論的研究
Project/Area Number |
22520397
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 陽一 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (50301271)
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Keywords | 名詞句 / 生成文法 / Distributive Phrase / 項削除 / 付加詞条件 / 相 / WH素性 / WH-Op |
Research Abstract |
平成23年度は、特に以下の2点に関して「個別言語の記述」ならびに「比較対照研究」を行った。 1.「数詞+ずつ」を伴う名詞句が項削除を受けた場合の解釈 本年度は、Distributive Phrase (DistP)の存在を仮定した上で「数詞+ずつ」を伴う名詞句の項削除について検討し、項削除を受けた場合にも、述語がstage-levelかindividual-levelかによって文法性もしくは解釈に違いが生じることを明らかにした。更に、この相違も、項削除がPF-deletionおよびLF-copyingのいずれをも許すと仮定することによって、DistPの存在を仮定した分析のもとで正しく説明されることを示した。この研究成果は、ハンガリー語、ドラビダ言語族等で見られる「数詞+数詞」の構造解明にも繋がる可能性がある。 2.理由を問う疑問詞「何を」の構造とWH-Opの移動に関する制約 Iida(2011)において「何を」は、修飾関係を結ぶ要素に(移動操作によって)付加されなければならないと主張されている。この分析のもとで、本年度は、当該疑問詞のWH素性の認可について考察した。付加位置にある要素内からの移動は許されないため、当該疑問詞自体は、この付加操作後、CPに移動することはできない。よって、「何を」の場合は、WH-OpのみがCPに移動することによって、WH素性の認可が行われるのである。この研究成果は、付加詞からの移動が、ある条件のもとでは許されることを示している。当該疑問詞が相(Outer Aspect)に関する制約に従う(Kurafuji 1997)とすると、付加詞条件(Adjunct Condition Eflects)と相の関係に注目することによって当該条件の本質を捉えられるのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では疑問詞「何を」を研究項目として挙げていなかったが、本研究課題推進者の平成19-20年度、基盤研究(C)(#19520341)の研究成果を当該疑問詞まで発展させることができた。また、非顕在的な名詞を伴うと考えられる「時の副詞節」におけるWH-Opの移動に関しても検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究課題の最終年度に当たり、ミニマリストプログラムの枠組みにおける「理論的研究」に移り、研究成果をまとめる。しかしながら、前半では時間の許す限り、(1)「数詞+ずつ」を伴う名詞句とドラビダ語族の言語における「数詞+数詞」を伴う名詞句の項削除に関する比較分析、(2)名詞句削除の現象に関してTakahashi(2011)との比較検討も行う予定である。
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