2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520398
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 正男 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (50324835)
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Keywords | 日本語 / 中国語 / 名詞句 / 統語論 / 生成文法 |
Research Abstract |
本研究の目標は、現代の理論言語学における重要な仮説の一つである「決定詞(DP)言語vs.裸名詞句(bare NP)言語のパラメータ仮説」(Chierchia 1998等)の妥当性の検証である。このパラメータ仮説は、名詞句の統語から意味への写像には言語間で差異があるという趣旨の仮説であり、この仮説によれば中国語や日本語のような類別詞を持つ言語においては、裸名詞句(bare NP)が項(argument)として解釈され、決定詞(Determiner)に代表される機能範疇が存在しない、ということになる。この仮説の批判的検証のために、研究初年度にあたる本年度は、「類別詞」の統語と意味の解明を中心に研究を行った。日本語と中国語の比較対照研究に重点を置くために、海外研究協力者であるC.-T.James Huang博士(ハーバード大学)との共同研究を柱とした研究計画を立て、研究を遂行した。その結果以下のような仮説を構築するに至った。 1. 類別詞には2通りの統語構造があり、どちらを採用するかは言語によって異なる。これは、(1)裸名詞句を補部とする主要部の場合と(2)付加詞の場合である。 2. 上記1の(1)、(2)に関して、中国語は前者のみを採用し、日本語は両者を採用している言語である。 3. 類別詞言語の名詞句周縁部には音形を持たない随意の機能範疇が存在し、この機能範疇の有無が名詞句の意味解釈(特定性等)に影響を与えている。 これらの成果の一部を国際学会GLOW-in-Asia VIII(2010年8月)、南山大学言語学研究センターにおける国際ワークショップ(2010年9月)、日本英語学会年次大会(2010年11月)等で発表した。
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