2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520398
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 正男 大阪大学, ぢ学院・言語文化研究科, 准教授 (50324835)
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Keywords | 名詞句 / 日本語 / 中国語 / 類別詞 / 比較統語論 / 項削除現象 |
Research Abstract |
昨年度からの研究により、日本語の後置型(postnominal)の類別詞と中国語の類別詞が共通の統語構造を持つ一方で、日本語の前置型(prenominal)の類別詞は異なる統語構造を持つ、という趣旨の仮説を構築した。本年度はこの仮説の検証を中心に調査を実施した。以下主要な成果を二点述べる。 1.類別詞と複数を表す名詞接尾辞との共起関係について 中国語の複数を表す名詞接尾辞(例:-men)と日本語の「-達、-ら」には意味的な共通点が非常に多いが、その一方で両言語はこの類の名詞接尾辞と類別詞の共起に関して異なる振る舞いをする(Li 1999, Kurafuji 2003)。本年度はこの点について調査した。その結果、両言語の名詞接尾辞が同じ統語的性質を持つと仮定した上で、Watanabe (2006)が提案する日本語の後置型類別詞の統語構造を採用した分析により上記の違いを説明できるという結論に至った。 2.類別詞を含む名詞句の削除現象の統語的メカニズムの解明 日本語の類別詞を含む名詞句内の削除現象に関するSaito et al.(2008)とWatanabe (2010)の間の論争について、新たなデータの発掘を基に、Saito et al.(2008)の分析を支持する以下の内容の分析を提案するに至った。 (1)日本語の後置型(postnominal)の類別詞と中国語の類別詞は名詞句を補部として選択する機能範疇であり、共通のメカニズムの下でその補部(=名詞句)の削除を認可する。 (2)日本語の前置型(postnominal)類別詞は名詞句内に現れる付加詞(Saito et al.2008)であり、類別詞を除いた形での名詞句削除は認可されない。これはN'などの中間投射が統語操作の適用対象ではないという一般原理から導き出される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度と今年度にそれぞれ主要研究テーマを設定して研究を行ってきた。具体的には、「中国語と日本語の類別詞の統語的・意味的分析」(初年度)と「中国語と日本語の名詞領域における省略現象の分析」(今年度)であるが、研究テーマを設定した段階で想定していた研究成果がある程度達成できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き類別詞の統語的および意味的側面に焦点を当てることにより、類別詞言語の名詞句周縁部の統語構造の解明に寄与することを目指していく。具体的には、日本語で見られる類別詞の遊離現象を研究対象の一つとして、名詞句周縁部の構造を探る。その過程で、同じ類別詞言語である中国語においてなぜ同様の遊離現象が不可能であるのかを探っていく。
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