2011 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法における統語構造のグラフ理論に基づく線状化に関する研究
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22520401
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊島 孝之 九州工業大学, 大学院・情報工学研究院, 准教授 (40311857)
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Keywords | 言語学 / 生成文法 / グラフ理論 / 線状化 / 統語構造 / 二分木巡回探索 / 極小主義 / 多重支配 |
Research Abstract |
生成文法理論における言語表現としての線状的音韻形式は、グラフ理論的根付順序「本」とみなされる統語構造の終端記号にあたる形態から得られるものとして一般に仮定されてきたが、極小主義素形句構造理論では統語構造本の節点間には順序を仮定しておらず、いかに終端記号が音韻形式として線状化されるかが問題となっていた。 本研究課題の二年目である今年度は、従来の根付順序「木」構造としての統語構造ではなく、近年、移動現象や共有省略現象等の種々の言語現象の分析に提案されている多重支配構造についての研究を行った。多重支配構造はグラフ理論的には根付無閉路有向グラフ(Rooted Directed Acyclic Graph : RDAG)であり、その終端記号(形態)から言語表現としての線状的音韻形式を得るには、多重支配されている節点を単独支配節点に刈込み、根付有向「木」に還元することにより、非平面無順序「木」でも深度優先探索による巡回走査法が適用可能であり、巡回走査アルゴリズム内に多重支配枝刈込みのアルゴリズムを組込むことが可能であることを究明した。 この多重支配枝刈込みアルゴリズムはパラメータ化か可能であり、パラメータ値の設定は移動現象の顕在/潜在性の差異を具現化し、また省略現象における照応方向性と相補関係にある可能性が見えてきた。これは日本語のように調和的に主辞末尾で顕在的疑問詞移動が必須でない言語では、調和的に主辞先頭で顕在的疑問詞移動が必須である英語での右枝節点繰り上げ構文に構造的に対応する構文では前方省略が働いている可能性があることが判明した。 これらの成果については、南カリフォルニア大学で開催された「平行領域に関するワークショップ」で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、多重支配構造の研究を進め、国際ワークショップでの発表に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した通り、多重支配構造のアルゴリズムを位相幾何学的ソート法の観点から改良を試み、さらなる対象となる言語現象の精査を行う。
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