2010 Fiscal Year Annual Research Report
言語器官の中核を担う統語システムとその最適性ともいうべき性質の解明に向けて
Project/Area Number |
22520409
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北原 久嗣 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (50301495)
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Keywords | 言語学 / 統語論 / 生成文法理論 / ミニマリスト統語論 / Biolinguistics |
Research Abstract |
本研究は、ミニマリスト・プログラムと呼ばれる生成文法理論の枠組みのもと、言語器官の中核を担う統語システム(統語関係を決定するシステム)の解明を試みる。具体的には、構造構築操作とその適用手順、統語システムから解釈システム(音声・意味を解釈するシステム)への転送操作とその適用手順、構造構築や転送という操作の適用手順を特徴づける最適性ともいうべき性質、これら3点に焦点を絞り、本研究が提示する研究課題に取り組むものである。平成22年度は、"On Phases"(Chomsky 2008)で提示された「移動は併合の一種であり、併合のみが統語システムが用いる構造構築操作である」とする仮説を詳細に検討した。具体的には関連する二つの問いを中心に考察した。もし、移動と呼ばれてきた操作が、先行する併合操作によってつくられた構造内の要素を対象とする併合(内的併合 lnternal Merge)であり、そのような構造内の要素を対象としない(これまで移動と区別されてきた)併合(外的併合 External Merge)との違いは併合操作の適用手順の違いであるとするならば、なぜ、外的併合と内的併合がどちらも適用できる場合、常に外的併合が選ばれるのだろうか。一例を挙げると、ミニマリスト・プログラムの研究では一貫して他動詞文の主語はvPのSpecに外的併合によって導入され、その適用はvPのSpecへの内的併合(例えばWhat did you buy?に於けるwhatのvPのSpecへの内的併合) に先行すると仮定されてきた。しかし、もし外的併合と内的併合の違いが適用手順の違いに収束するのであれば、その違いから外的併合が内的併合より優先され先行することを導くことはできるのだろうか。このような問題意識のもと併合の適用手順を厳密に分析した。その結果、probe-goalの枠組みのもとでは、外的併合と内的併合では、minimal search の計算過程で違いが生じる可能性を指摘した。
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