2011 Fiscal Year Annual Research Report
言語器官の中核を担う統語システムとその最適性ともいうべき性質の解明に向けて
Project/Area Number |
22520409
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北原 久嗣 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (50301495)
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Keywords | 言語学 / 統語論 / 生成文法理論 / ミニマリスト統語論 / Biolinguistics |
Research Abstract |
本研究は、ミニマリスト・プログラムと呼ばれる生成文法理論の枠組みのもと、言語器官の中核を担う統語システム(統語関係を決定するシステム)の解明を試みる。具体的には、構造構築操作とその適用手順、統語システムから解釈システム(音声・意味を解釈するシステム)への転送操作とその適用手順、構造構築や転送という操作の適用手順を特徴づける最適性ともいうべき性質、これら3点に焦点を絞り、本研究が提示する研究課題に取り組むものである。 平成23年度は、併合や転送という操作の適用手順を最適性の視点から考察した。併合の適用手順については「移動と呼ばれてきた操作が、先行する併合操作によってつくられた構造内の要素を対象とする併合(内的併合)であり、そのような構造内の要素を対象としない(これまで移動と区別されてきた)併合(外的併合)との違いは併合操作の適用手順の違いにすぎない」とする仮説のもと、内的併合は、構造内より要素を選び出す作業が課される分、外的併合より複雑な適用プロセスを経ているという可能性を提起した。転送の適用手順については、位相ごとに機械的に転送する仮説を廃棄し、位相内の一致による格付与が転送の適用を要請している可能性を指摘した。また意味解釈に寄与しない素性(抽象格、機能範疇のphi素性等)に関しては、"On Phases"(Chomsky2008)で採択されている仮説は経験的に維持できないことを明らかにし、そのうえで「意味解釈に寄与しない素性はその値の有無に関係なく転送によって削除される」可能性を指摘した。これらの可能性を探求するなか、併合や転送という操作とその適用手順について新しい分析を提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って課題に取り組むことができ、期待された成果をあげることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度もこれまで同様、研究計画に従って課題に取り組み、期待される成果をあげていきたい。最終年度となる今年度は、機会を捉えてこれまでの成果を発表していく予定である。
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