2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアムズ症候群にみる音韻処理・生成能力と韻律構造の解明
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22520411
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片田 房 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70245950)
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Keywords | ウィリアムズ症候群 / 歩行と始語の遅れ / 音韻処理能力 / 言語のリズム型 / 単語反転 / モーラ / ラドリング / 非定型性言語 |
Research Abstract |
下記(1)~(4)を中心とする活動を行い、其々の成果を得斉また社会への還元を目的とする(5)の活動を行った。 (1)【単語反転ラドリングと子音変換ラドリングの継続実験】日本語における有意味語の反転と子音変換の能力のある被験者に対して、主に無意味語を用いた実験を行い、無意味語にも有意味語と同様のラドリング能力を認めた。これは、記憶に頼ることのない音韻運用であることを意味し、音韻処理能力の可塑性を示唆するものと推察される。 (2)【言語リズム型認知能力の検証】三タイプのリズム型言語(ストレス型、シラブル型、モーラ型)の言語音wを被験者に聞かせ、反復能力を記録した。リズム型に関わらず、被験者にとって馴染みのある言語音により高い集中力が発揮されることを観察した。未知の言語の中では、モーラ型言語音の反復が良好であった。また、十代の被験者より二十代の被験者の反応が圧倒的に良好だったが、言語習得の臨界説に関する示唆を得るまでには至らなかった。 (3)【物語作成能力の検証】Mayer(1969)の無文字絵本を用いて被験者の物語作成能力を検証した。知能障害と全体把握力障害との間の関連性を示唆する結果が得られたが、ラドリング能力との相関性はないものと結論付けられる結果であった。WS疾患者のラドリング能力は知能とは独立したものであることが推察される。 (4)【歩行開始年齢と始語年齢の相関性に関するインタビュー調査】保護者へのインタビューを行い、歩行が始語に先行するという時間的な相関関係が認めた。インタビューの過程で、WS疾患児に特微的な聴覚過敏が言語音の聞き取りを妨げる要因である可能性が浮上し、始語の遅れの要因リストに加えた。 (5)【社会への還元】本研究の社会への還元の一端として、日本のNPO法人が11月に開催した第1回カンファレンスにて、保護者と教育関係者を対象とした講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた保護者へのアンケート調査をインタビュー方式に変更したが、アンケート項目には設定していない話が保護者側から提供されるなど、柔軟に対応できる直接対面方式の利点も多く、新たな研究発展の方向性を見出すことができた。全般的に数量化の難しいデータもあるが、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したラドリングのデータ分析に基づき、モーラの自律性、および韻律構造に関する学術論文を執筆する段階にある。言語習得性に関する課題には、知能の要素を入れて論ずる必要がある。この点、多数の先行研究によって平均IQが提示されてはいるが、そのほとんどがWISCとWAISによるものである。WS疾患児者に対するWISCやWAISの妥当性には議論の余地もあり、高度な協調運動や視空間情報分析を必要としない検査法を用いて認知能力を検証する余地がある。レーヴンマトリックス検査を用いてこの点を補充する活動を可能な限り行い、統括的なデータをそろえる予定である。
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Research Products
(2 results)