2011 Fiscal Year Annual Research Report
統語的プライミングを用いた抽象的統語知識の獲得メカニズムの探求
Project/Area Number |
22520419
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
郷路 拓也 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (60509834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 友比呂 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (40513651)
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Keywords | 言語学 / 心理言語学 / 第一言語獲得 / 文理解 / 統語的プライミング |
Research Abstract |
本年度は、成人を対象とした文理解実験の手法に関する検討と、実験の開発に多くの時間を費やした。当初の計画においては、文理解実験の課題は「真偽値判断」であった。これは、日本語の文と、何らかのイベントを描写した画像を提示し、文がその画像に「当てはまるかどうか」、すなわち画像が描写する状況で真になるかどうかを被験者に判断させる課題である。この課題は、いくつかのプライミングに関する先行研究で実際に用いられているものである。ところが本研究でこの課題を用いたパイロット実験を行った際、様々な問題が浮上した。最も大きな問題は、被験者の反応時間のばらつきがあまりに大きく、プライミング効果に関して信頼度の高い結果が得られる見込みが持てなかった点である。これはこの実験が先行研究よりもやや複雑な意味内容を持つ文を用いるため、それに応じて画像の内容も複雑なものとなり、「画像の内容を処理・理解するための時間」が反応時間に影響を与えたものと考えられる。また別の問題としては、刺激文を画像に対応させなければならないため、刺激文で使うことのできる動詞が限定される点であった。これらの問題に対応するため、研究計画を変更し、文理解実験は真偽値判断ではない課題を用いる実験に作り直すことになった。新たな課題は「文判断」、すなわち画面に表示された文が自然な文かそうでないかを答える、というものである。これは過去の膨大なプライミング研究が用いている「語彙判断課題」に着想を得たもので、実験の構造は既に確立された語彙判断課題の実験と同じものになる。この新実験を行うプログラムを作成し、パイロット実験で有効性を確認した後、データの収集を行った。データの収集は現在も継続中である。これらの経緯を通して得られた実験手法に関する知見は、統語的プライミングに関する基礎研究として重要な意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼児を対象とした実験調査の実施に遅れが生じている。これは、研究代表者が平成23年度に研究機関を異動したことに原因がある。以前の研究機関で利用できた実験環境(特に、大学の附属幼稚園)が利用できなくなり、新たに協力をしてくれる初等教育機関を探したり、研究機関内で倫理規定を策定するなどの作業に多くの時間が取られてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は本年度が完成年度であるので、本年度中に可能な限り多くのデータを収集することが非常に重要である。当初研究計画の時点では考慮されていなかった様々な問題により、データ収集の効率がこれまでのところ高かったとは言えないが、様々な作業や試行錯誤を経てここに至り十分な準備が整った、と言える。本年度はこれまでに築いた「土台」を利用し、効率よく数多くのデータを収集することとする。
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Research Products
(5 results)