2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520428
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40313621)
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Keywords | 言語学 / アイスランド語 / 相互構文 |
Research Abstract |
本年度は、アイスランド語の相互表現において最も生産的な手段である相互代名詞の研究を中心に行なった。分析対象として、アイスランド語話者の協力による主に話し言葉に関する調査と、新聞記事をコーパスとする書き言葉の調査から得られた言語データを使用した。 その結果、次のようなことがわかった:(1)相互代名詞は二つの要素から成り、それぞれの要素の独立性が強い「分離型」と、全体で一つのまとまりを成す「一体型」の二つのタイプに分けられる。(2)前置詞と結びつく場合に両者の違いは明瞭で、「分離型」では二つの要素の間に前置詞が現れるのに対し、「一体型」では二つの要素の前に前置詞が現れる。しかし、前置詞が現れない場合には、両者を形態面で截然と分けることは困難である。(3)「分離型」と「一体型」では、先行詞と第一要素の一致のしかた(数と格)に相違がある。また、「分離型」,は規範的・書き言葉的で「一体型」は口語的であるという文体的相違もある。(4)対格目的語の位置に相互代名詞をとっている動詞を検討すると、「分離型」よりも「一体型」をとる動詞の方が、いわゆる他動性の程度が高い傾向にあると思われる。(5)同じ二つの代名詞要素の組み合わせが、継起的事態の表現にも使用されるが、その場合は「分離型」でしか現れず、また、目的語として機能している語句を先行詞とすることもあるという点で相互代名詞とは異なる。 先行研究でも相互代名詞の二つのタイプ(ただし呼び方は異なる)の存在は指摘されていたが、本研究ではその形態面での複雑な現れ方の一端を明らかにし、また、新聞記事という限られた資料の範囲ではあるが、その使用の実態を示したことに意義があると考えられる。 来年度は、相互代名詞に関する残された問題をさらに追究するとともに、相互性を表わす副詞相当句と、語彙的な相互動詞に関する研究に着手する予定である。
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Research Products
(3 results)