2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520428
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40313621)
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Keywords | 言語学 / アイスランド語 / 相互構文 |
Research Abstract |
本年度は、アイスランド語において相互的な事態がどのような言語手段で表現されるかという拡がりの範囲を確定することを目的として、アイスランド語の書き言葉の一次資料(書籍や新聞記事)の調査から得られた用例と、アイスランド語話者の協力による主として話し言葉に関する調査データを使用して研究を進めた。 その結果、問題となる表現の範囲をほぼ確定することができ、研究結果は「現代アイスランド語の相互表現の概要」と題する論文で公表した。この論文では、本研究課題で研究対象としている表現の全体像を示した。最初に、論文中で問題となる代名詞類の形態について論じた後、以下の表現を順次取り上げた:(1)語彙的相互動詞、(2)動詞と再帰代名詞による相互表現、(3)接尾辞-stをもつ相互動詞、(4)接頭辞sam-をもつ相互動詞、(5)相互代名詞による表現、(6)相互性を表す副詞相当句による表現。このうち、再帰代名詞を含む(2)と、再帰代名詞起源の接尾辞をもつ(3)と、相互代名詞を使用する(5)、および、(6)のうち再帰代名詞を成分として含むものについては、照応関係による制約から、節の主語の相互性を表す表現しかできないが、その他の表現手段によるものでは、主語の相互性を表すものと、目的語の相互性を表すものの両方があることを、それぞれの具体例を示しつつ論じた。 アイスランド語の相互表現の全体像を示した研究はこれまでなかったため、この分野での記述的な研究への貢献という点で意義のあるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アイスランド語の相互表現の包括的な記述研究を行なうという第一の目的については、計画に沿ってほぼ進められたが、もう一つの目的である、一般言語学的な観点から、特に他動性との関連について考察を行うという点については不十分な検討しかできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に十分検討できなかった項目の細部、特に語彙的相互動詞と、相互性を表す副詞相当句の働きについての研究を展開する予定である。また、一般言語学的な観点からの考察、特に、相互性を表す動詞そのものが取る構文、および動詞とその他の要素の組合せにおける変異が、他動性の高低に関わる諸特徴とどのように関わるかを解明することに焦点を当てて研究を進める。
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Research Products
(2 results)