2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520429
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 博文 静岡大学, 人文学部, 准教授 (10283326)
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Keywords | ハイダ語 / 北アメリカ先住民諸語 / 形態統語論 / 言語類型論 |
Research Abstract |
本研究は,カナダのブリティッシュ・コロンビア州北西海岸地域のクィーン・シャーロット諸島スキドケイトで話されるハイダ語(スキドゲイト方言)の主に形態統語法を中心とした記述を目指し,更に,その類型論的な特質を考察することを主たる目的とするものである。 今年度は,8月から1ヶ月弱の間,同地に滞在し,話者数名の協力を得ながら,調査を行なった。その成果は,おおよそ次のようにまとめられる。 1.ハイダ語の他動性に関わる要素として,使役接辞をとりあげ,その機能を明らかにした。ハイダ語には,使役接辞がいくつかあり,それらが付加される動詞の結合価,意味特徴などによって使い分けがあり,更に,それらの使役接辞によって派生された使役文において機能的な違いがあることを指摘した。 2.ハイダ語にある様々なタイプの従属節とそのテンスの現われ,焦点標識の機能と関係節の構造と焦点標識の現われの関係を明らかにするための基礎資料として,ハイダ語のテキスト(自由談話)を蒐集し,その分析を行なった。 3.現地で行なわれているハイダ語教育プログラムと連携し,学習者向けの辞書を作成するための基礎的な作業を行なった。 また,現地調査以外での成果をあげれば,次のようにまとめられる。 4.19世紀から20世紀初頭にかけて記録されたハイダ語の資料の整備を図り,特に1で述べた使役接辞のふるまいについて,現在話されているハイダ語と差異がみられることを指摘した。 5.過去の調査で得た音声資料を経年劣化の起こらないデジタル方式に変換した。 以上の研究成果は,現地で行なわれているハイダ語教育にも資するところがあり,本研究課題に寄せられる期待も大きいことを指摘しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,ハイダ語が話されているカナダのブリティッシュ・コロンビア州に1ヶ月弱滞在して調査を行ない,必要とする資料を蒐集することができたことから,おおむね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ハイダ語の複文構造や焦点標識のふるまいについて考察を一層深化させるために,テキストの蒐集と分析を中心的に行なうと同時に,質問応答式によって,話者の言語運用の面での知識をより効果的に利用することを図りたい。ただ,話者が高齢層に限られることから,時として必要とする資料が十分蒐集できないことも予想される。その点は,現地の協力者との連携によって,新たな話者を探し出すなどの努力が必要となってくるであろう。
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