2010 Fiscal Year Annual Research Report
コリマ・ユカギール語の統語構造と情報構造の関連究明による統語論記述の精緻化
Project/Area Number |
22520434
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
遠藤 史 和歌山大学, 経済学部, 教授 (20203672)
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Keywords | 言語学 / ユカギール語 / 統語構造 / 情報構造 |
Research Abstract |
本年度は研究計画の初年度であるため、すでに蓄積したコーパスにおけるテキスト資料の確認と整理から作業に着手した。まず、既に収集中のものを含むコリマ・ユカギール語のテキスト資料の形態論的・統語論的な分析を行って、この言語の統語構造を体系的に考察するのに十分なデータを揃える素地を整えた。また新たに収集した若干のテキスト資料をデータに追加した。その上で、コリマ・ユカギール語の基本的な統語構造について、研究代表者が2005年の著書においてすでに提示している統語論の枠組みを暫定的な出発点として、テキスト資料の形態論的・統語論的分析に着手した。 本年度の段階で特に注目する形態論的特徴として、(a)主語・目的語・定形動詞上に形態論的に標示された焦点、(b)顕示的ではないが焦点と同様の機能を持つと想定される被所有名詞、(c)主題提示の機能を持つ可能性がある若干の接語、(d)様々な種類の指示詞などに注意を払いつつ分析した。また、統語論的特徴としては、(a)主語名詞句・目的語名詞句・定形動詞の単文内における順序、(b)複文における従属節と主節の種類と順序、(c)従属節・主節それぞれの内部における順序、(d)修飾要素と被修飾要素の順序と隣接関係、(e)代名詞・指示詞の分布、(f)特に主語名詞句・目的語名詞句に関する省略現象、などに注意を払いつつ分析した。 以上のデータに基づき、研究代表者の統語論記述に関する基本的枠組み(遠藤2005)の批判的な検討をすすめた。この基本的枠組みではまだうまく記述できていない諸点に注目することによって、改訂と精緻化をスタートさせた。特に今年度は、以上のデータを基にして、コリマ・ユカギール語の統語構造における基本的な要素の順序と隣接関係、およびそれらから逸脱する順序とその原因の究明を中心として検討を進めた。
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