2010 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語比較言語学理論に基づくゲルマン語動詞体系生成過程に関する研究
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22520436
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 教授 (80207117)
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Keywords | 印欧語 / 比較言語学 / ゲルマン語 / 動詞体系 / 形態変化 / 形態的混交 / 語等置の方法 |
Research Abstract |
研究実施計画に従って、今年度は「語等置の方法」(the method of word equation)に基づくゲルマン語動詞形態の歴史・比較言語学的分析を行い、有用なデータを蓄積することを目標とした。焦点を強変化動詞の詳細な分析に絞り、作業を継続している。この中で、特に強変化第V類動詞(the strong class V verbs)について、現在有用な分析ができつつある。これまでの研究成果から、強変化第V類の過去形は印欧祖語の畳音の付いた完了形(the reduplicating perfect)とナルテン語根の未完了形(the imperfect from a Narten root)が形態的混交(morphological conflation)を受けた形に由来すると、私は予想している。この説明方式を裏付けると思われる2つの特性を、今年度の分析から見出すことができた。1)強変化第V類動詞を構成する動詞語根には、印欧祖語において現在形及び未完了形にナルテン型(あるいはアクロスタティック型)の母音交替を示したものが少なからず存在する。2)強変化第V類動詞の過去形において、散発的にヴェルナーの法則の効果(the effect of Verner's Law)が観察されるが、延長階梯を示す語根末の無声摩擦音に散発的な有声化がなぜ生じたのかという問題に対し、形態的混交仮説は有効な説明を与えることができる。この点は、他の発見とも併せて、次年度以降に単行論文として公刊する予定である。 また、ゲルマン語の過去現在動詞(preterite-present verbs)について、形態的混交仮説を用いてその歴史的由来を説明した論考を大幅に改定して、1冊の単行本として公刊できたことも今年度の成果である。
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Research Products
(1 results)