2011 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語比較言語学理論に基づくゲルマン語動詞体系生成過程に関する研究
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22520436
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (80207117)
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Keywords | verbal system / Proto-Germanic / Proto-Indo-European / strong verbs / morphological conflation / comparative linguistic / morphological development / Verner's Law |
Research Abstract |
研究実施計画に従って、前年度の成果を踏まえ、今年度は強変化動詞の生成過程について詳細な考察を推し進めることができた。 その成果のひとつとして、日本歴史言語学会第1回大会で口頭発表した「ゲルマン語強変化動詞IV,V類の過去複数形をめぐる考察」(平成23年12月18日発表)という論考がある。これは、従来欧米で成されてきた強変化動詞(特にIV,V類)の形態的特徴の歴史的説明に関する研究を、総合的に批判的に考察した論考である。またその上で、印欧祖語の畳音の付いた完了形のみから強変化動詞の過去形の形態が発達したとする従来の考えよりも、強変化動詞の過去形形態は、印欧祖語の畳音のついた完了形と未完了形(アムフィキネティック型の未完了形、ナルテン型の未完了形双方を含む)の形態的混交から生じたとするアプローチの方が、関連する様々な現象をより説得力をもって説明できる可能性があることを明らかにしたものである。この発表原稿は、次年度に若干の改訂を加えた上で、活字にして公刊したいと考えている。 また、今年度の研究活動を行ううちに、強変化動詞の形態的特徴の生成過程を明らかにしようとする際には、ヴェルナーの法則による語根末無声摩擦音の有声化の有無が、その過程の解明に有用なヒントを与えるという着想を得た。次年度以降、この観点から新たな成果を得ることができると期待している。 尚、昨年度末に公刊した著書は、今年度のうちにMartin KummelによるLIV^2の改訂増補版(http://www.liv.uni-freiburg.de/liv2add.htmlに引用され、また、DonRingeによる書評(JIES 39 Fall/Winter 2011)も得た。これらも今年度に得られた成果として挙げておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、意義ある研究成果を徐々にではあるが、継続的に生み出すことができている。研究は停滞することなく、新たな着想、新たな分析、新たな説明理論構築が進んでいるので、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も着実に成果を生み出せると思っている。日本歴史言語学会第1回大会で口頭発表した原稿を改訂中であり、より詳細な点について充実させているところである。活字化して次年度は公刊できると思われる。このほかに、ヴェルナーの法則の観点からゲルマン語動詞体系の生成過程解明を目指した複数の論考を執筆中であり、それらは数年内に公刊できる見込みである。このような状態であるので、今後の研究の推進について懸念するところは特に存在しない。
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Research Products
(1 results)