2013 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語比較言語学理論に基づくゲルマン語動詞体系生成過程に関する研究
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22520436
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (80207117)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強変化動詞 / ゲルマン祖語 / ヴェルナーの法則 / 語根末摩擦音 / 形態的混交説 / 未完了形 / 強変化過去形 |
Research Abstract |
前年度に日本歴史言語学会第2回大会(千葉大学)で口頭発表した原稿に加筆修正を加え、同学会の機関誌である『歴史言語学』第2号(2013年11月30日発行)に公刊することができたのが、ひとつの成果として挙げられる。「ゲルマン語強変化動詞V類過去複数形に散発的に見られる語根末摩擦音の有声化について:*wes- 'be, stay, dwell' の事例を中心に」と題する論文であり、これは強変化動詞V類の過去形形態が、どのような形態変化を経て前ゲルマン祖語の時代からゲルマン祖語の時代にかけて生成発展したか、そのメカニズムの説明を試みた論文である。過去複数形に散発的にのみ見られるヴェルナーの法則適用例が、この動詞形態生成過程解明の重要なヒントを与えていることを主張し、特に、*wes- 'be, stay, dwell' の事例がこのことをよく表わしているということを、説明したものである。 「形態的混交説」と名付けた仮説に基づく説明で、強変化動詞VI類過去形形態生成のメカニズムの解明についての考察を進めることも行ったが、「髭を剃る」「パンを焼く」という意味の動詞の未完了形がそれらの過去形形態の基盤を与えた可能性があるという着想を得たという点に、目下の研究成果は留まっている。論文として発表できるまで、まだしばらくの経験的分析が必要となると思われる。次年度も継続して、この課題の考察を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読付きの全国的学会誌に関連する論考を公刊できたこと、またゲルマン語動詞体系の中でも顕著に特異な過去形形態を見せる強変化VI類動詞の当該形態の発達について、「形態的混交説」に基づいた、首尾一貫した説明図式を構築しつつあることから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲルマン語の動詞体系のうち、過去現在動詞の現在形と強変化動詞の過去形形態の起源について、「形態的混交説」と名付けた仮説から首尾一貫した説明を与えることが、本研究の目的である。IV類動詞の複数形態では、過去現在動詞の現在形ではゼロ階梯母音を反映した形態が生じるのに対して、強変化動詞の過去形では延長階梯母音を反映した形態が生じる。この点こそ「形態的混交説」で有効に説明できる現象であるということを、昨年度日本言語学会145回大会で口頭発表したが、未だ活字化されていない。新年度には論文として公刊したい。また、強変化VI類、VII類過去形については、本格的な論考がまだできていないので、このあたりの説明図式の構築を試みたいと思っている。
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