2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520437
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
黒沢 宏和 琉球大学, 法文学部, 准教授 (20264468)
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Keywords | 古高ドイツ語 / タツィアーン / 聖書翻訳 / ラテン語 / 時制の一致 / 接続法 / 未来完了 / モダリテート |
Research Abstract |
古高ドイツ語では、現代ドイツ語に比べ頻繁に副文において接続法が用いられる。この接続法は、これまで主文への従属の目印として、あるいは主文の影響によって接続法が現れると解釈されてきたが、この見解には議論の余地が残されている。本研究の目的は、「ラテン語の影響」及び「モダリテート」(Modalitat)という二つの新しい視点から、この問題を解明することにある。本年度は先ず、830年頃フルダの修道院でラテン語から古高ドイツ語へと翻訳された作品『タツィアーン』を研究の対象とした。『タツィアーン』のラテン語テクストをよく調査してみると、直説法未来完了形か接続法完了形か、語形の上では全く判別できない動詞43例が確認された(例えばdixerit「言う」)。そこで、この43例が古高ドイツ語のテクストではどのような語形で翻訳されているかを検証し、ラテン語から古高ドイツ語へと翻訳される際、「ラテン語」や「モダリテート」の影響があるのか否かを考察することに主眼を置いた。2010年夏にはドイツへ赴きデュッセルドルフ大学やベルリン自由大学で文献や資料の収集を行った。その後9月に京都ドイツ語学研究会第72回例会で口頭発表し、研究成果の一部を発表した。発表後の質疑応答を踏まえ、研究内容をさらに修正・深化させ、その成果を『独逸文学』第55号へ投稿した。本年度の研究成果として、既述の43例においては、ラテン語から古高ドイツ語へと翻訳される際、ラテン語やモダリテートの影響はなく、時制、端的に言えば「時間関係」が大いに影響していると言える。本年度は『タツィアーン』のみを研究対象としたので、来年度は同じラテン語と古高ドイツ語の、いわゆる行間逐語訳の作品『イシドール』を研究対象とし、本年度得られた成果が『イシドール』にもあてはまるかどうかを検証したい。
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Research Products
(2 results)