2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語の文法体系にみられる構文ネットワークについて:結果構文を中心に。
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22520447
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
島 憲男 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (80360121)
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Keywords | 結果構文 / ドイツ語 / 中間構文 / 自動性・他動性 |
Research Abstract |
「結果構文」は、ここ約10数年間で主に英語を中心に研究が進行してきたものの、他言語の研究者も関心を持つ汎言語的に非常にユニークな性質を持った構文である。過去においては、ドイツ語学の分野でも英語で主張されていることがドイツ語にも当てはまるといった事例研究や、結果構文の特性のうちで僅かに一部分を扱ったものは散見されていたが、近年になってドイツ語結果構文の体系的な記述研究や当該構文の持つ諸特性の解明を試みる研究が始まり、ドイツ語の結果構文は、構文としてまとまった文法的カテゴリーを形成する一方で、その具体的な用例には意味的・統語的な多様性があることが指摘されてきた。本研究課題では、当該構文の一断面と隣接・近接関係にあると考えられる他の文法的カテゴリー(結果の目的語、中間構文)との連続性や競合関係に注目することで、現代ドイツ語における結果構文の広がりを検証し、ドイツ語の文法体系の中での当該構文の位置づけを試みた。平成23年度では、主として結果構文の非典型系的なタイプの用例に見られる「自動性・他動性」の連続性を主眼におき、他動詞を基底として自動詞にも構文を拡張させている結果構文と、他動詞を基底動詞とし再帰表現を用いることで意味的な自動性を統語的に作り出す中間構文をこれまで提案した自動詞化および他動詞化のスケールの中で比較対照するべく現実のドイツ語使用の現場から多様な実例を多数収集するよう心掛けた。また中間構文については対照言語学的・言語類型論的研究の視点が非常に示唆的であるため、言語類型論を専門研究領域とする研究協力者の支援も受けながら随時必要に応じて他言語でのデータも合わせて考慮した。ドイツ語からの多様な実証的データと他言語についての研究成果から伝統的に二律背反的な「自動性」対「他動性」の対立を超えて、両構文の接点をさらに詳しく考察していく準備を整えるよう心掛けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していなかった学内業務に忙殺されたことに加え、言語によって「中間構文」の定義が微妙にずれている状況の中で先行研究などでよく目にする「典型的な」例文以外のデータを実際のドイツ語言語使用の中より一定量探し出すことは必ずしも計画通りに進行するものではなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のデータに基づいて一定量の動詞を選び出し、言語コーパスなどを使用して意味的に関連する語での構文形成状況を探りながら、データの種類を増やしたいと考えている。そのうえで、多様なデータの説明するために、想定している自動詞化および他動詞化のスケールがどの程度まで有効かを検証し、二律背反的な「自動」対「他動性」という捉え方ではなく、連続体としての「自動性・他動性」に注目したい。
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Research Products
(2 results)