2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国語の近代「国語」への進化に関する総合的研究:欧化文法と日本語の影響を中心に
Project/Area Number |
22520449
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
沈 国威 関西大学, 外国語学部, 教授 (50258125)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 慶市 関西大学, 外国語学部, 教授 (60115293)
|
Keywords | 国語 / 近代語 / 現代中国語 / 日本語 / 日本借用語 / 欧化語法現象 / 日中同形語 / 言語接触 |
Research Abstract |
平成23年度は、まず中国語一般語彙56000語における日中同形度に関する調査を完了させた。 これにより、同形語の語数、意味分野別分布、常用度といった中国語の基本語彙における日本語の影響を諮る上で最も基礎的なデータを確保したことになる。日中同形語は近代語彙交流の結果であり、平成24年度は同形語を対象に辞書類、コーパスを用いる出典調査を実施し、A中国の古典語、B日本創作語(即ち和製漢語)、C日本改造語(即ち中国古典語に新しい意味を付与する)に分類していく。B、Cの量と意味的特長により、現代中国語に与える日本語の影響が明らかになる(Aについて日本語によって使用頻度は近代以前の文献より活発になったかどうかという視点の分析もしなければならない)。 日本語の中国語への具体的な進出ルートに関して、留日学生が編纂した用語集『新爾雅』(1903)、清政府の「上諭」、立憲準備の啓蒙書、政府指定の識字教科書について分析を行い、著書と論文を執筆した。 また新語訳語を受け入れる側の言語意識に注目し、胡適の『文学改良劉芻議』(1916)を言語接触と語彙交流の視点から再分析し(北京師範大学における講演会)、大きな議論につながった。 23年度では、研究代表者だけでも近代新語訳語をめぐる漢字文化圏での語彙交流に関して研究論文を9本、著書を1冊公刊した。分担者も西洋言語と中国語の交渉についてほぼ同量の研究成果を挙げている。当初の研究目標を達成したと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成22年度、『中日同形語小辞典・甲』(白帝社、2011年200頁)、『近代英華・華英辞書解題』(沈国威編・関西大学出版部、2011年250頁)を公刊し、中国語一般語彙56000語における日中同形度に関する調査を50%完了。平成23年度、日中同形度に関する調査を完成し、関連論文を9本、著書を1冊公刊した。24年度はこれまでの研究成果と調査結果を踏まえ、まとめていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度『現代中国語常用語彙表56000語』についての調査結果に基づき、日中同形語について抽象語彙を中心に語源記述を行い、現代中国語に存在する日本語影響の実態を近代知識体系と密接な関係のある分野から明らかにし、日本語の借用による中国語多音節化の過程、表現性の変化等を分析する。さらに表現性の要請による形式動詞、二音節前置詞の発生、及び文構造にもたらされた変化を記述する。また西洋言語に対する直訳に起因する連体修飾機能の変化を翻訳小説等で捉えていく予定である。研究分担者、内田慶市は平成23年度に引き続き、近代西洋人による中国語研究と中国人研究者に与えた影響について考察すると同時に、英華辞典・英和辞典の相互影響関係、特に訳語の移動、借用に関する論文を執筆する予定である。
|