2011 Fiscal Year Annual Research Report
移民女性の言語問題―ハンディ克服のための言語習得戦略と言語支援とのかかわり
Project/Area Number |
22520453
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
金 美善 国立民族学博物館, 外来研究員 (50469623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 博史 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (80142016)
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Keywords | 移民 / 女性 / 言語 / 政策支援 / 識字 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル化に伴う人々の移動を「女性」と「言語問題」に焦点を絞り、移民女性を取り巻く困難な社会状況を社会言語学的観点から捉えようとするものである。さらに、移民女性の言語問題を当事者の戦略とホスト社会の支援との関係を明らかにしようとするものである。当年度には以下のような研究調査を行った。 研究代表者の金は、国内では去年に引き続きアジア系外国人コミュニティのホスト社会との交流について、日本の市民団体による外国人への日本語支援活動が、外国人にどのように活用されているのかを調査した。国外調査では、イギリスではロンドンを訪問し、イギリスの移民に対する公的な言語(英語)支援状況に対する資料を集めたほか、移民コミュニティの言語活動状況を移民の集住地域から観察することができた。一方、韓国の移住女性への言語問題を知るため、行政の委託団体を訪問し、言語支援を受けている移住女性のインタビュー調査ができた。いずれの調査からも、移民(外国人)に対する公的支援とそれがいかに外国人に生かされ、ホスト社会への適応につながるかを知るための貴重な情報を得ることができた。 研究分担者の庄司は、国外ではフィンランドにおいて昨年に引き続き、非識字定住者を対象とするフィンランド語講座で教授方法、教材使用などの参与観察のほか、参加者や教師に対して聞き取り調査を実施した。また、スウェーデン、フィンランドにて、これらの国に移住後、現地の言語を習得することで、職をえた女性移民(ベトナム人、フィンランド人、パレスチナ人、ハンガリー人)のほか、エスニックビジネスに従事する移民り起業に関するライフストーリーをインタビューした。日本では、私費による中国帰国者に関し、引き続き調査したが、公費による帰国者にくらべ、初期の日本語教育、日本適応教育が欠損したこととともに、その後の行政による支援にも大きな影響がみられる。特に40代に来日した二世世代は、今日こどもが独立し家庭を離れる中、日本語能力の不自由さから社会との断絶しつつある現状がみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非識字者の調査対象件数はやや少ないが、その分は、支援者や公的機関からの情報でおおむね補えるみこみであり、全体としては、ほぼ当初の計画にそって進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究体表者の金は本年度、移民女性の言語問題について、北朝鮮からの移住(脱北者)女性に焦点を当て調査を行う予定である。特に韓国の脱北女性が直面している言語問題について、意思疎通とは異なる移住女性の言語に対するホスト社会の態度や規範意識について調査をする。研究分担者の庄司は本年度も研究計画を大筋変更せず、あらたな対象者にインタビューを継続するが、できれば行政、支援団体などを通じ、非識字者への支援についての情報でインタビューの情報を補充する予定である。
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Research Products
(6 results)