2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520464
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (10335086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 喜代子 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (80462810)
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Keywords | 名詞の文法化 / 否定極性 / 助詞 / 助動詞 / 非存在文 / 叙述 / とりたて |
Research Abstract |
本研究課題は、日本語の名詞の形式化・文法化現象に着目し、その動態・変化を支える普遍の構造に迫るものである。形式化・文法化を果たした名詞個々の歴史・地理・共時的多機能の動態を現象面から観察分析し、「名詞の形式化>文法化」という把握のもと、名詞としての多機能・諸用法の実現可能性を見極めながら、個別名詞の語彙的意味による条件・制約、普遍・一般としての構造的条件・制約、語用論的条件・制約の相互作用としての説明を目指す。 計画2年目の平成23年度においては、各形式の用例最終、調査を進めるとともに、以下のような成果発表を行った。 まず、分担者の協力のもと、ホカ句の統語的振る舞いについて整合的な説明を示した。現代共通語のホカ句は否定述部とともに叙述の構造をなして除外解釈を持つが、否定との拘束関係はなく、累加解釈をも示して助詞化も認められない。本研究ではこれを、ホカが範疇名詞として集合を切り分け(保留す)るという語彙意味上の特性から説明した。 また、キリの歴史的変化の過程について、名詞「切(限)り」の文法化という観点から整合的に記述した。キリは、ホカと同じく一部方言において助詞シカ同様の否定極性用法を示す点で、範囲名詞としての変化の一類型に示唆を与える一方、その変化過程が「丈>ダケ」の変化とも重なる点が大きい。この点、キリが数量的把握にも参与するという性質によるものか否かなど、名詞の文法化の制約条件を考える上で興味深い課題となる。 ダケ・キリについては、接続助詞化、複文構成という観点から再考する機会を得た。本研究課題で着目する名詞の多様性のうち、叙述名詞化との関連が深い。研究期間の後半で深めていきたい点である。 このほか、代表者の参画する関連研究プロジェクトにより、名詞一語文にかかわる学説史的展開についても成果を発表し、本研究課題の推進に示唆を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画にそって調査、論文化を行い、特にダケ、キリ、ホカについて進捗が得られた。論文2件、図書3件、学会発表3件のほか、分担者による採択決定論文3件など、具体的な成果を挙げている。分析対象として挙げながらも、用例調査中にて成果発表に至っていない形式については、次年度に順次成果発表につなげていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画はおおむね順調に、かつ発展的課題を見いだしながら進展している。計画にそって理論的枠組みの把握・整理、ならびに歴史・地理・現代語データに基づく用例調査、分析、一般化を進め、順次成果発表、論文化につなげていく。研究計画の後半、集大成に向け、理論研究からの知見を参照し、類型化・構造的説明についても自覚的に着手していく。
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