2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域間・位相間交流から見た条件表現に関する通史的研究
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22520465
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
矢島 正浩 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00230201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 祐樹 藤女子大学, 文学部, 教授 (40231857)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 条件表現史 / 上方・大阪語 / 江戸・東京語 / 従属節 / 近代語 / 中央語 / 標準語 |
Research Abstract |
1.条件表現の中でも、特に原因理由表現史において非活用型条件句(条件節が体言述語)で旧来のナレバが残存しやすかった事情について検討した。このことについて、条件表現史において大きなポイントとなる、「「恒常条件」の多用」という事象が、非活用型条件句の場合、旧来の仮定形ナラバの存在によって吸収されるために、原因理由節への影響は僅少となることが予想される。実際にナレバの衰退期に当たる近世中期資料を調査したところ、「恒常条件」がナラバの非活用型条件句例によって表されるようになる事態が広がっていることが確認された。これは、逆に「「恒常条件」の多用」という事象に着目することが、条件表現史上、この期に起きた変化を理解する上で重要であることを示す証左であるともいえる。 2.条件表現史において起こった出来事について、次の3点から大きくとりまとめた。 (1)条件表現の原理は古代語と近世語以降とでどのように相違しているのか(2)その変化はなぜ起こったのか、どういう事情が関与するのか(3)次の(a)~(c)の3点が条件表現の変化に対してどのように関わっているのか (a)条件表現の一文としての構成法の変化、すなわち主節(後件)に対する従属節(前件)の位置づけ・働きの変化と、条件表現の移り変わりとの関係。(b)言語の地域的な位置づけの変化、すなわち上方・大阪語が中央語の位置にあったこと、さらに中央語でなくなることと、条件表現史との関係。(c)語彙化や文法化などの問題と、条件表現史との関係。 以上の作業により、構文史上に起こる変化が、発想法、またそれに対応する表現指向の変化に基づくものであり、日本語史上に起きたさまざまな変化と分かちがたく結びついて起こるものであることが明らかとなった。 3.標準的なる近代日本語のあり方や成り立ちについて検討した。本年度は、台湾における日本語教育という観点から行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「条件表現に関する通史的研究」をテーマとする論考を、著書の形で公にした。その第4・5部は「地域間・位相間の交流」を検討の軸の一つとするものであり、まずは、当初に設定していた調査・検討範囲については、考察が順調に進みつつあるといえる。ただし、特に「位相間」の交流に関しては、計画当初に把握していた段階より、調査すべきこと、考察すべきことが広がってきており、そのあたりを修正しつつ検討を続ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画においては、条件表現史を順接表現の範囲で検討することとしていたが、従属節で起きた事象を構文史の観点で捉える上では、逆接表現の検討が重要であることが徐々に明らかとなってきている。残された研究期間内では大規模な調査までは望めないが、可能な限り、調査対象を拡大して、その観点から捉えられることについて整理を行っておくことによって、次の研究の展開に供したいと考えている。
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