2012 Fiscal Year Annual Research Report
国語史資料・学習史資料開発のための近世地方寺院伝存文献の調査研究
Project/Area Number |
22520471
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
原 卓志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00173063)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶井 一暁 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60342094)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国語学 / 教育学 / 学習史 / 学習記録 / 地方語史 / 庶民教育 / 地方寺院 |
Research Abstract |
平成23年度に調査を完了し公刊した『寶壺山願勝寺所蔵文献目録』について、「所蔵文献索引」「人名索引」「寺社名等索引」の3種の索引を作成し、平成24年12月に『寶壺山願勝寺所蔵文献目録索引編』(全99頁・私家版)として公刊した。この索引の完成によって、同目録の使用が簡便となり、研究資料としての有効活用ができるようになった。また、平成23年12月から実施してきた国伝山地蔵寺所蔵の文献についての調査を完遂した。本寺の所蔵文献の分量から、目録を上下の二分冊にして刊行することとし、平成25年3月には『國傳山寶珠院地蔵寺所蔵文献目録〔上冊〕』(全480頁・私家版)を刊行した。さらに、同目録の下冊についても現在作成を継続しており、上冊・下冊を合わせた「文献索引」他の索引編とともに、平成25年度中の刊行を目指してその編集を進めている。 上述の文献調査を基に、願勝寺伝存文献を資料として、願勝寺歴代住職の内、多くの写本を残した3人の僧侶を取り上げ、その書写活動について、年次を追って書写活動の場所や背景について考察し、それぞれの修学実態の一端を明らかにした。また、書写本の内容について比較し、願勝寺における文献の蓄積が、その後の僧侶の修学に影響を与えることを述べた(原、平成25年3月、鳴門教育大学研究紀要第28巻)。また、寺院・僧侶による庶民教育をテーマにした発展的な研究として、各宗寺院における「寺子屋」についての再評価を行ったほか、岐阜県内の真宗寺院伝存文献の調査を行い、その結果に基づいて、近世の地方寺院を地域の教育と文化の拠点として位置付けることを試みた(梶井、平成24年6・7月、寺門興隆14巻6号・7号。平成24年9月、教育史学会第56回大会)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5年計画の3年目を経過し、当初計画の徳島県内の3ヶ寺については、その伝存文献調査を完了した。しかし、伝存文献量の多さから、国伝山地蔵寺の文献調査が25年3月までかかったとともに、所蔵文献目録の下冊、および索引編の公刊が25年度にずれ込む結果となった(目録下冊と索引は25年度に刊行できる見通しである)。 25年度以降に計画していた香川県内の寺院との調査交渉に手間取り、現段階(25年4月)でも見通しが得られない状況である。この点が最も大きな遅れとなっている。ただし、これまでに調査してきたところから、徳島県内真言宗僧侶の修学実態を解明する上で、徳島県北の莊嚴院地蔵寺所蔵文献の調査が不可欠であることが分かってきた。幸いにも、莊嚴院地蔵寺との交渉が成立したことから、今後の研究方針を修正したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
目録の公刊については、24年度に調査を完了した国伝山地蔵寺所蔵文献目録の「下冊」および索引編を作成して公刊(私家版)する。 寺院の伝存文献調査では、香川県寺院の文献調査について、寺院との調査に関する交渉が手間取っていることを鑑み、当初計画を変更して、徳島県内の寺院についての文献調査を継続することとした。これまでに進めてきた調査・研究によって、徳島県板野郡の莊嚴院地蔵寺が近世の真言宗僧侶の修学・交渉において、きわめて重要な位置にあることが分かってきた。幸いにも、本研究における所蔵文献の悉皆調査についても許可を得ることができた。当寺には大量の文献が伝存されており、本年度の1年間でそのすべてを調査し、完了させることは到底無理だと判断される。そこで、本研究の残存期間である25年から26年度の2年間を荘厳院地蔵寺所蔵文献の調査期間として当てることにし、調査が完了し次第に所蔵文献目録・索引を作成し公刊したい(公刊は26年度に計画)。また、その間に香川県の寺院との交渉が進めば、平行して調査を行うように計画する。 その一方で、対照研究としての他宗派・他府県寺院における伝存文献研究については、研究分担者を中心にして交渉がまとまり次第に推進する。
|
Research Products
(4 results)