2012 Fiscal Year Annual Research Report
室町中期の古記録・古文書に於ける記録語・記録語法の研究
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22520472
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 教育学部, 教授 (30199559)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 室町中期 / 古記録・古文書 / 広橋兼宣 / 『兼宣公記』 / 記録語 / 記録語法 / 唐名と異名 / 漢語副詞 |
Research Abstract |
平成24年度は、広橋兼宣『兼宣公記』(記録期間1387~1428)の調査を行った。(1)「記録語」では「邂逅」「帰畢」「計会」「喧嘩」「故障」「自愛」「併」「入魂」「斟酌」「濟々焉」「題目」「張行」「突鼻」「以外」「如然」「夜前」「与奪」等が見える。(2)「異名と唐名」の「異名」では、「雲客(殿上人)」「歓楽(病)」「五色(瓜)」「南呂(八月)」「老堂(母)」等が見える。なお「老堂(母)」は小学館日本国語大辞典(第二版)に掲載がない。「唐名」では「亜相(大納言)」「羽林(近衛府)」「翰林(文章博士)」「黄門(中納言)」「職事(蔵人頭・蔵人)」「執柄(摂政・関白)」「尚書(弁官)」「丞相(大臣)」「夕郞(蔵人)」「仙洞(太上天皇)」「大理(刑部省・検非違使別当)」「礼部(治部省)」等が見える。(3)「漢語表現と漢文語法」は、漢文表現に「曽未(かつて~ず)」や「宜(よろしく~べし)」が使用される。漢語に「芳躅」がある。(4)「記録語法」では、「有御~(御~あり)」「以~被~(以て~らる)」「被下~(くださる)」「候気色(気色をうかがふ)」「伺天気(てんきをうかがふ)」や「更以」「遂以」「将以」「先以」「皆以」「尤以」等の「副詞+以」が見える。(5)「敬語表現」として、主上・女院には「令~御坐(しめ~おはします)」が使用される。表記が「令~御」でなく「令~御坐」である点が有意義である。また、「令~給(しめ~たまふ)」は主上、摂政、大臣クラスに使用されるが、場面では家君(父、権大納言)にも使用する点が興味深い。(6)「漢語副詞」に「委細」「惣別」「大略」「如法」等が見える。(7)「病気語彙」に「歓楽」「窮屈」「疾病」「所労」「損事」「病悩」がある。その他として、記録語法であった「及秉燭(秉燭に及びて)」が「秉燭程」「秉燭之程」と記載されているのが時代の変遷を思わせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
古記録の文献は量的に多量なので、満足できるところまで調査が出来ているかという点では遅れているという評価になろう。但し、その文献の傾向が分かるというところまでは調査が及んでいるといえる。一つ一つの文献の傾向を記述できるところまで調査を行い、その傾向を記述する。その後、記録語、記録語法で論文化しやすいところから進めていく。今後、最終年の調査とこれまでの四文献の総合的な検討が課題となるが、鋭意進めていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
室町中期の四文献のうち、分量の多いものを先に進めてきたので、今年と来年度は調査の進展を挽回できる予定である。最低限その文献の傾向が分かる2~3年分の調査を行い、記述をすることを優先する。 後は、四文献の中で調査語を焦点化し、論文にしやすい記録語法の「有御~(御~あり)」や「被下(くださる)」や記録語の「生涯」などを中心に調査を進める。基本的には調査分量の調整で対応する。
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Research Products
(6 results)