2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520477
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
梁 暁虹 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00340274)
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Keywords | 音義 / 俗字 / 則天文字 |
Research Abstract |
昨年10月に本科研費申請が採納されたとの通知を受け取り、研究準備及び一環の研究に携わってきた。本研究費を受け、先ず研究条件は大きく改善されたと言えよう。提出した研究計画に従い、本年度は主に仏教音義写本の資料を蒐集、調査、スキャンニング、データベース構築等の基礎資料作成、以前の研究(所謂secondary literature)の閲読、ノート取りの作業をした。資料蒐集の作業はほぼ完成したと言える。本年度は奈良時代において日本人仏僧による次記二種の音義中に用いられる俗字について研究する。1.『新華厳経音義』(大治三年(1128年)の写本,簡稱大治本);2.『新訳華厳経音義私記』(小川家藏本,簡稱『私記』)中の俗字についての研究。これは昨年度の作業を基礎とし、以下に記すテーマについて研究を行う。即ち、(1)両音義中にあらわれる俗字に関する比較研究,主に『私記』俗字の「解疑」、難解な俗字の解釈。(2)日本現存の『華厳経』八十卷の音義、特に奈良時代に書かれた日本の僧侶の手による以上両書の音義書から、作者の背景、また両書の性質や内容等の全面的研究を試み、これらの資料を海外学者等に紹介。(3)今までなされた則天文字研究の成果をふまえ、以上両書に現れる(特に『私記』中の)「則天文字」が総合的に見てどのような位置づけができるか。『私記』中の俗字は非常に豊富にあるため、このような全面的な研究をすべく準備しており、中国の研究者との共同研究を進める。これら以外、至徳三年(1386)心空の撰による『法華経音訓』中の異体字についても研究。三種の音義は、全て日本人仏僧の撰述であり、俗字研究の資料価値は重要且つ大である。私の研究は、要するに漢字学と仏教文献学とを結合させるものであり、その成果は奈良、平安、鎌倉時代に於ける八十卷の『華厳経』及び『法華経』の写本の用字、古代に於ける日本人僧侶の漢籍仏典学習の過程中の俗字に対する認識がどのようであったかの実態解明を目標とするものである。
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